保健室こそICT活用、出欠連絡・健康診断を効率化し「子どもの本音」も引き出す 他教員の負担も軽減させて養護教諭の地位向上
ただ、保健室経営はICTを活用しなくてもそこまで大きな支障がないのが実情で、養護教諭向けのICT関連の研修や書籍が限られていることもあり、阿部氏が研修などで出会う養護教諭の多くは「何から始めればいいかわからない」状況にあるという。そのような人でも気軽に始められることとして阿部氏が推奨するのが、約1億点のテンプレートを活用できるデザインツール「Canva」を使った、ポスターや保健だよりの作成だ。

(写真は阿部氏提供)
阿部氏は、朝の通勤中にその日の保健に関するトピックを集めてCanvaでスライドを作り、学校の昇降口付近のテレビで音楽つきで流すデジタルサイネージを展開している。保健だよりは、Canvaで作成したものを連絡網アプリで各家庭に配信することで印刷する手間が省け、配信直前まで記事作成が可能になって余裕が生まれたという。

(写真は阿部氏提供)
「これまでICTに馴染みがなかった養護教諭の先生方は、まずは自分の『かわいい』『楽しい』という感覚から始められる、Canvaのようなデザインツールの導入をしてみるのも手だと思います」
阿部氏は、今後は保健室のホームページを立ち上げてClassroom経由で保健関連の動画を見られるようにしたり、個別の相談フォームを設けたりすることも検討中だという。また、保健室をより身近な場所にするため、保健室前の廊下の壁と天井にプロジェクションマッピングのような楽しいアニメーションを映し出す取り組みも始めたそうだ。

(写真は阿部氏提供)
「保健室業務をきっかけに、JamboardやCanvaなどの使い方を全校の先生方に発信できれば、養護教諭もGIGAスクールの取り組みに積極的に関与していくことができます。ICTの導入は面倒なことだと捉えられがちですが、他の先生方の業務効率化にもつながる提案をすれば、好意的に受け入れてもらえるのではないでしょうか。
私の場合は、ICTの導入によってどのようなメリットがあるのかを説明し、ツールの扱いに不安がある先生には個別にフォローを行うことで、多くの先生方の理解と協力を得ることができました。学校における養護教諭の地位をもっと高めていくためにも、養護教諭は自分にできるところからICT活用を始め、全校に向けて新しい提案を積極的にしていってほしいと思います」
(文:安永美穂、注記のない写真:enterFrame / PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部
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