コーチングスキルを「授業や学級経営」「管理職のマネジメント」に生かす極意 トップダウンやティーチング→伴走型の支援へ

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これまで木村氏は、ベンチャー企業の経営層などのビジネスパーソンだけでなく、学校の教員や管理職、指導主事といった多くの教育関係者に対してもプロコーチとして伴走してきたが、「誰かに話を聞いてもらっていない人は多い」と感じるという。

「今の学校の先生方は本当に大変です。初任者研修はありますが、1人ひとりの先生に誰かが伴走する余裕はなく、校長先生や教頭先生も、迷ったときに相談する相手や場がなかなかありません。その結果、従来のトップダウンのマネジメントや『あれをしなさい』『これはダメ』といったティーチング的な関わりが再生産されてしまう。それにより、とくに若い先生が苦しくなって辞めてしまう現状もよくお聞きします」

一方のコーチングは、「相手の可能性を心から信じるというマインドセットから始まります」と木村氏は説明する。それがあるからこそ、相手は話したい気持ちになり、互いの信頼関係が生まれるのだ。

「そうしたマインドセットをベースに、相手が子どもたちなら、例えば、探究的な学びを行う中では、自分なりの正解を見つけることを促していく。管理職から部下の先生たちに対しても同様に、自己選択や自己決定を促していく。今の時代、先生がどういう教育をしたいのか、どう子どもたちと関わりたいのかを自覚する必要があると思いますので、先生方の強みを生かす教師教育を行うという観点からもコーチングは有効だと思います。また、先生方は日頃から自分の話を聞いてもらっていれば、子どもたちの話も聞けるようになるはずです」

まずは「ペーシング」で信頼関係を構築

では、コーチングの手法は具体的にどのように教育現場に生かすことができるのだろうか。代表的なスキルとしては、「ペーシング」「承認」「聴く(傾聴)」「質問」「フィードバック」「提案」「要望」といったものが挙げられる。これらのスキルを基にした実際のコーチングについて簡単に説明しよう。

例えば、先生が子どもと関わる際に活用する場合は、「ペーシング」から始めるといいそうだ。声のトーンや顔の表情、会話のスピードや内容を合わせ、相手が使う言葉を繰り返したり、相づちを打ったりする手法だ。

「例えば、子どもから『最近元気がないんです』と言われれば、『そうか、元気ないんだね』と繰り返すようにして共通の土台をつくっていきます。ペーシングは、改めて1対1の時間を取らなくても普段の関わりの中で使える信頼関係構築スキルなので、忙しい先生でも活用しやすいと思います」

そして、単に子どもの言葉を「聞く」のではなく、子どもが本当に訴えたいことは何なのか、子どもの心は何に動かされているのか、しっかりと「傾聴」すること。また、「承認」も大事だという。

承認とは、価値判断が働きかける側にある「褒める」のとは異なり、事実を認めることだ。具体的には、「おはよう、元気?」(存在承認)、「早速試してみたんだね」(行動承認)、「目標を達成したんだね」(成果承認)、「半年前よりここができるようになったね」(成長承認)といったアプローチだ。他者からの価値基準で評価されるわけではなく、自分の変化を実感できるため、子どもの自己効力感を高めることができるという。

「そのうえで先生は、子どもに『提案』して触発していくことも必要でしょう」と木村氏は説明する。下図は、具体的なアプローチの一例だ。

「今、探究学習や自由進度学習など、自ら考えて進めていく学びや、子どもたちが自ら校則やルールを見直す活動などが少しずつ広がっていますが、学校の先生がそうした活動でも求められているのは、子ども本人の考えをたずねることだと思うのです。例えば『あなたは今それに関心があるんだね』『何が面白い?』『次はどうしようか』といった問いかけが必要ですが、それってまさにコーチングなんですよね。これからの子どもたちの学びや活動を支えるうえで、コーチングは活用できるスキルと言えます」

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