進化する脱炭素株主提案、投資家の賛同に手応え 提案者のマーケット・フォースCEOに聞く

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――ESG投資については、特にアメリカで気候変動問題に関する株主提案への賛成比率が2023年あたりから急低下するなど、逆風が吹いていると指摘されています。そのような逆風は感じましたか。

アメリカでは、ESG投資は政治的なアジェンダとなっており、その是非をめぐって非常に不安定な状況が生じている。特に金融機関は表立ってESG投資について声を挙げることが難しくなっている。しかし世界的に見れば、ESG投資の流れは大きくは変わっていない。日本でもESGの重要性への認識はしっかりしている。これまでの数年間、20%台の賛成を安定的に得てきたことがそうした事実を物語っている。

三菱UFJフィナンシャル・グループの2024年株主総会で気候変動問題への取り組み強化を求める株主と支援者(提供:350.Japan)

――マーケット・フォースは、石油やガス投資に厳しい目を向けています。しかし日本では液化天然ガス(LNG)は脱炭素化への移行過程で不可欠な「トランジションエネルギー」であるとして、官民挙げて投融資を推進しています。移行プロセスなしに再生可能エネルギー中心の経済社会を実現することは不可能であるという考え方も強固です。このような考え方の相違をどうやって乗り越えていきますか。

日本の官民の間でLNGがトランジションエネルギーであるとみなされていることは認識している。その一方で、気候変動問題に関する科学の知見として、パリ協定が目指す1.5度目標の達成のためには、新規のガスプロジェクトを実施する余地はないとされている。必要なことはLNGへの依存度を引き下げていくことだ。日本は官民挙げてアジアでガスビジネスを拡大しようとしているが、私たちは大変憂慮している。

水素・アンモニア発電の実用化を疑問視

――エネルギー企業には何を求めていますか。

今回、JERAの大株主である中部電力に株主提案をした。JERAはパリ協定が示す1.5度目標やネットゼロ目標から最も遠い位置にある企業であるととらえている。ここで重要なのは、(JERAを監督する)中部電力の取締役会の責任や企業としての戦略だ。化石燃料にまつわるさまざまなリスクを、中部電力の取締役会はどのように管理していくのか。現在のままでは不十分だと私たちは考えている。

――中部電力やJERAは、発電用燃料としてのアンモニアや水素、CCS(二酸化炭素の回収・貯留)の実用化に、脱炭素化への活路を見いだそうとしています。

アンモニア、水素、CCSとも、脱炭素化の手段としてはコストがかなり高く、ビジネスとしての実現性に疑問がある。これに対して再生可能エネルギーであれば、継続的な輸入の必要もなく、コストも安い。私たちは、水素・アンモニア燃料についてライフサイクルでの評価を実施したリポートも作成している。ぜひ読んでほしい。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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