進化する脱炭素株主提案、投資家の賛同に手応え 提案者のマーケット・フォースCEOに聞く
――金融機関や企業との対話はどの程度進んでいますか。
株主提案のほかに、企業とのミーティングも実施している。
いずれもその後の企業の行動変容によって、どの程度成果があったかが示されるものと考えている。先ほど例に挙げたいくつかのプロジェクトへの関与の中止事例は、ポジティブな進展であることは確かだ。他方で3メガバンクや日本のエネルギー企業による化石燃料への投融資は依然として大きい。各社はカーボンニュートラルの方針こそ打ち出しているものの、改善すべき点は多くある。
――2024年の株主提案では、取締役会のガバナンスの向上に力を入れています。昨年は「銀行の投融資ポートフォリオをパリ協定の1.5度目標と整合させるための移行計画を策定・開示せよ」といった内容でした。今回、気候変動関連の事業リスクおよび事業機会を効果的に管理するための「取締役のコンピテンシー(職務遂行能力)」や「顧客の気候変動移行計画に関する評価」を新たに提案した理由は何でしょうか。
前者のコンピテンシーを求める提案では、次のような点を問題視している。すなわち3メガバンクや中部電力では、気候リスクを管理・監督する機関としての取締役会がきちんと機能しているとは言えないということだ。方針はあっても実際の企業活動に落とし込む際の監督が十分にできていないと私たちは考えている。
3メガの投融資は脱炭素の公約と整合していない
3メガバンクに対しては「顧客の気候変動移行計画に関する評価」も提案した。銀行は気候変動がビジネス上のトップリスクであると公言しており、顧客への審査もすると述べている。しかし実際の投融資活動は、その公約とは整合していない。ゆえにこの提案では、3メガバンクの公約や方針に、銀行の投融資活動を整合させていくことを求めている。
このような株主提案の内容は、「クライメート・アクション100プラス」といった、世界規模での投資家イニシアティブでの要求内容とも合致している。また、日本のアセットマネージャーからの関心も高くなっていると感じている。そうしたことから、提案内容について多くの投資家の賛同を得られたと考えている。
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