途上国への前向きな視線、冷静で現実的な外交論 『覇権なき時代の世界地図』など書評4点

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ブックレビュー『今週の4冊』

 

[Book Review 今週のラインナップ]

・『覇権なき時代の世界地図』

・『経済学の思考軸 効率か公平かのジレンマ』

・『街の書店が消えてゆく』

・『王墓の謎』

『覇権なき時代の世界地図』北岡伸一 著
『覇権なき時代の世界地図』北岡伸一 著(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)

評者・東京女子大学教授 酒井一臣

パラオ、パキスタン、コンゴ民主共和国、パラグアイ、モルドヴァ。国境線しか描かれていない世界地図でこれらの国を間違いなく指し示せるだろうか。いずれも政治・経済・治安などに問題を抱えている国々だ。グローバルサウスと呼ばれ関心の集まる国も多い。

本書は、JICA(国際協力機構)理事長だった著者が訪問した国々の情勢と、JICAの貢献をまとめたものだ。昨今、日本の影響力低下の話題ばかりが目立つ。それでもかつての日本の近代化成功の秘訣と経済・技術援助は途上国にとって貴重なのである。

途上国に注ぐ前向きな視線 今必要な冷静で現実的な外交論

著者の途上国に注ぐ視線はつねに前向きだ。例えばルワンダの虐殺事件で、地域共同体の裁判は信頼性に欠け不正を生むとの批判がある。しかし、著者はルワンダの安定を優先すべきで、「徹底した正義の追求」をするより「未来志向」で現地の実態に合わせた解決を目指してもよいという。

これまでの日本の関与が、どのように親日意識を育むのかを探る「史政学」があってもよいとのユニークな提案もある。情けは人のためならずということか。

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