富士急が買収「西武の遊覧船」小田急にどう対抗? 2人の人気鉄道デザイナーが芦ノ湖で「競演」
海賊船はその人気の高さから数年おきに新造船を投入しており、2019年には鉄道デザインで名高い水戸岡鋭治氏がデザインした新たな海賊船「クイーン芦ノ湖」が就航した。水戸岡氏は豪華観光列車「ななつ星in九州」のデザインで知られ、同船にもななつ星を思わせるデザインが随所に施されている。内装は「女王陛下の宮殿のような感じ」(水戸岡氏)といい、海賊船というよりも豪華客船という表現がぴったりくる。
船内だけではなく、外に出ても「見張り台」が8カ所もあり、「映画『タイタニック』で、船首で腕を広げて風を感じるシーンを再現できます」(水戸岡氏)。インスタ映えする場所をたくさん作ろうという狙いがある。建造費は12億5000万円。従来の海賊船の建造費をおよそ2億円上回った。
富士急の買収で「遊船」テコ入れ
これに対して、西武グループは2004年の有価証券報告書虚偽記載問題に端を発した上場廃止もあり資金調達がままならず、設備投資を抑えてきた。そのため1980年代に製造した船舶がほぼそのまま使われていた。窓は大きいとはいえ、客室には国鉄時代を思わせる座席が無機質に並んでいた。
状況が変わったのは2023年3月。富士急行が西武グループの遊覧船事業を買収し、箱根遊船として運営を始めたのだ。富士急は河口湖をはじめとした富士山の周辺で事業展開を行っており、富士山の眺望が売り物となっている箱根への進出は悲願ともいえた。その箱根進出をアピールするためにインパクトのあるものを創りたい。そして実行に移したのが、船舶のリニューアルであった。
富士急が新たな遊覧船「SORAKAZE(そらかぜ)」のデザイナーに指名したのは建築家の川西康之氏。「WEST EXPRESS(ウエストエクスプレス)銀河」「やくも」「雪月花」など鉄道車両のデザインで知られるが、瀬戸内海を走る観光型クルーザー「SEA SPICA(シースピカ)」や世界初の次世代内航電気推進タンカー「あさひ」など船舶デザインの実績も豊富である。
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