国内敵なし、日立「鉄道売上高」今期1兆円超えへ ドーマー副社長インタビューで判明した全軌跡

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では、今後も大型M&Aを重ねて成長を続けるのだろうか。タレスの交通システム事業買収に際しては、EUや英国の規制当局が日立の規模が大きくなりすぎることを懸念して一部事業を売却することを求めた。そう考えると今までのような大型のM&Aは困難かもしれない。ドーマー氏も「中小規模企業の買収を検討している」と話す。

分野的に強化したいのはデジタル関連。日立はIoTプラットフォーム「ルマーダ」を核としたデジタル戦略を進めている。IoT技術を駆使して車両や線路の状態を常時監視することで異常を事前に察知できれば、保守費用が安価になると同時に、運行の安全性も高まる。「たとえば1両に片側2つドアがある車両なら10両編成でドアの数は40。今までは40のドアを毎月点検していたが、ドアにセンサーを付けてデータを蓄積すると、どのドアが動作不良を起こすか事前に察知することができる」。

データ蓄積で優位を築く

もっとも、IoTプラットフォームではシーメンスが先行している。鉄道への活用という点でシーメンスと日立のどちらが優れているのか。この点について尋ねると、「日立が優れていると言いたいね」と笑顔で答えた。その理由は、シーメンスは製造面での活用に注力しているが、日立は顧客の価値向上に力点を置いているからだという。

「直接、鉄道の話ではないのだが」と前置きしたうえで、一例として挙げたのは、英国の公共交通運営会社ファーストグループにEVバスのバッテリー充電マネジメントサービスを提供したことだ。乗客の利用動向、道路状況、天候などによってバッテリーの寿命は大きく変わる。これらのデータを分析してバッテリー性能を最適化し、寿命延長につなげる。「デジタル技術で最も重要なのはメインナレッジ、すなわち業界のことをよく知っているかということだ。デジタル技術はそれを手助けするツールである」。

ということは、データを蓄積すればするほど、次の顧客獲得展開で優位に立てることになる。ドーマー氏が日立に入社した当時、クラス395案件を受注することに無我夢中で、IEPを受注し、M&Aを重ねてここまで大きな存在になるとは夢にも思わなかった。しかし、現在は日立の将来像をしっかりと見据えている。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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