「給食費無償化」で注目の青森県、宮下宗一郎知事が目指す「教育改革」の中身 教員の専門性発揮のため「金八ギャップ解消」を

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私は、個人的にドラマ「3年B組金八先生」が大好きなのですが、この何でもやりすぎてしまう昭和の先生像を理想像としてしまうと、さまざまな誤解が生じると感じています。言ってみれば「金八ギャップ」ですね。これを解消するのが今の時代に必要な教育改革だと考えています。

大学時代から志を持って専門的に勉強し、日々実践で技術を磨いていらっしゃる先生方を私はリスペクトしています。だから、先生方が本来の専門性を発揮する環境をいかに私たちが作っていくかが大事だと考えています。

まずは、本来は先生が担うべきではない役割をいったん切り離し、先生が専門性を発揮できる環境にする。こうした金八ギャップの解消により、逆説的に金八先生のように人間性を大いに発揮できる先生も自然と増えるのではないかと考えています。

DXを横串に市町村連携、目的は「働き方改革」

──有識者会議の提言を踏まえて教育大綱(2024~2028年度)を策定し、2024年3月末に公表されました。ポイントについてお聞かせください。

ポイントは、「めざす教育」として示した「こどもまんなか青森」の一言に集約されています。

「青森県教育施策の大綱(あおもり未来教育ビジョンVer.1.0)」

教育というのものは、学校のあり方、先生の働き方、地域の関わり方、生きる力など、いろいろな側面があり、大綱にもさまざまな方向性を盛り込みましたが、これらは何のためにやるのかといえば、子どもたちの未来のため。

そこで、「こどもまんなか青森」を県の公教育の大きな軸として掲げ、宣言したのです。県教委も市町村教委も学校も、これを軸にそれぞれの方針を策定してほしいと思っています。

──教育大綱では、学校教育改革の3つの柱として「学校の働き方改革、教職員のウェルビーイング向上(教職員の余白づくり)」「教育DX、学びの環境アップデート(こどもたちの学びの環境づくり)」「学校の経営力強化(教育改革の出発点)」が挙げられています。2024年度は具体的にどのような取り組みを重点的に進めるのでしょうか。

事業としては、まずDXを横串に、県教育委員会と市町村教育委員会の連携を進めます。青森県はデジタル化が遅れており、統合型校務支援システムの整備率は全国平均86.8%に比べ、青森県は49.2%と非常に低い。人口の多い青森市や八戸市の導入率は100%ですが、0%の市町村が非常に多く、差が大きいのです。

そのため市町村連携を始めるわけですが、目的は学校の働き方改革です。このほか、学校の経営力を強化して学校が働き方改革を独自に進められるよう、外部コンサルタントによる伴走型支援などの仕組みも作りました。部活の地域移行も、ほぼ完了しているむつ市などの先行地域を参考に、全県でも移行の後押しをしたい。こうした取り組みを通じてまずは現場で改革の成果を実感してもらい、働き方改革の流れを作っていきたいです。

──そのような方向性を、県内の教育関係者にどのように浸透させていきますか。

私自身が学校校長会に頻繁に顔を出して、現場の課題をお聞きしながら私が考える課題、今回の教育改革について説明を重ねていきたい。同様に、教育委員会でも現場との対話を重ね、改革の方向性と現場感というものを一致させていただきたいと考えています。

「入試制度・学校・授業」のあり方を変えていく

──都道府県としては初の給食費無償化を決定されました。その狙いや、ほかにも早期に実現したい取り組みがあれば教えてください。

政策において最も大事なのは、大胆さとスピード感。給食費無償化は各ご家庭にとっての大きな負担減になると同時に、子育て支援に力を入れているというメッセージにもつながると思っています。子育て施策が一気に進む姿を発信することで、若者が青森県に定着し、還流するきっかけにもなるはず。気運を醸成して県民の期待に応えていくというサイクルをやり続けることが、県政の基本だと考えています。

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