テレビ番組「100分de名著」を統括するプロデューサーの仕事をするようになって、丸10年になる。その間、折に触れてコンテンツプロデュースの肝となる重要な指針を私にたたき込んでくれた1冊の名著がある。岡倉天心『茶の本』だ。
そのタイトルから茶道の指南書だろうと思われがちだが、とんでもない。これは第一級の思想書、哲学書ともいうべき著作なのである。近代欧米の物質主義的文化と対比し、東洋の伝統的精神文化の奥義を解き尽くそうという壮大な構想の下に書かれた、天心流の比較文明論といえる。
茶の精神は「虚」
読み解いていくと、建築、庭園、衣服、陶芸、絵画など、日本文化の隅々に至るまで「茶の精神」の深い影響が及んでいることがわかる。ごく日常的な営みに美や崇高さを感じ取る日本人ならではの感受性がいかにして育まれていったかを知ることもできる。
この記事は有料会員限定です。
ログイン(会員の方はこちら)
有料会員登録
東洋経済オンライン有料会員にご登録いただくと、有料会員限定記事を含むすべての記事と、『週刊東洋経済』電子版をお読みいただけます。
- 有料会員限定記事を含むすべての記事が読める
- 『週刊東洋経済』電子版の最新号とバックナンバーが読み放題
- 有料会員限定メールマガジンをお届け
- 各種イベント・セミナーご優待
トピックボードAD
有料会員限定記事
無料会員登録はこちら
ログインはこちら