黒い大地に真っ白な柱が光る。ハンガリー東部デブレツェンで、EV(電気自動車)向け電池世界最大手の中国CATL(寧徳時代新能源科技)が工場の建設を進めている。221ヘクタールと、東京ドーム50個分近い巨大な敷地だ。年間の生産能力は、EV200万台分。1兆円相当の資金を投じ、数年内に稼働させる。先行するドイツ工場の5倍以上の規模だ。
同じく電池大手のEVEエナジー(恵州億緯鋰能)も近くに工場用地を取得。セパレーター(絶縁材)世界最大手のセムコープ(雲南恩捷新材料)は、一足早く生産を始めていた。「通訳求む 学生も可」。中国語を広めるために中国政府が世界で展開する孔子学院を擁する名門デブレツェン大学の構内で、セムコープによるそんな貼り紙も見つけた。
牧草地や小麦畑の突如の変貌に、水や土壌の汚染を心配する住民はデモなど抗議活動を続ける。それでも、税金など投資条件を優遇し、誘致したハンガリー政府は意に介さない。EVを自動車産業の革命とみて、「電池大国」化を産業政策の目玉にしているからだ。
その中国企業が部品を売る主な相手は、ドイツの自動車メーカーである。メルセデス・ベンツ、アウディは別の都市に工場を構えており、デブレツェンにはBMWが進出した。
新しく敷かれた「BMW通り」を走ると、CATLの2倍の広さの敷地に白灰色の建屋ができ上がっていた。年産15万台の新鋭工場で、2025年にも新型EVシリーズ「ノイエ・クラッセ」を造り始める。東西冷戦時代、旧ソ連の空軍が駐留したデブレツェンとBMW本社があるミュンヘンとの間には、独ルフトハンザ航空の直行便が往来する。
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