教育格差広がる日本と何が違う?授業料無料だけではないフランスの学び保障 受験のない国「その人らしさの開花」目指す価値

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筆者は実際、難民として来た少年が3カ月後にはフランス語を流暢に話せるようになり、1年半後には「学年トップになったよ!」と報告する姿や、障害を専門職のケアで克服した事例など、「こんなにも人間には可能性があるのか」と感じるケースをいくつも見てきた。

精神疾患と薬物の依存症がある母親の下に生まれ、父親が異なる3人の兄弟とともに施設で育ったある若者は、大学院を卒業して英国に留学し、現在は弁護士をしながら福祉分野で発言をしている。「もっと早く施設に移されるべきだったが、学校の専門職が気づかなかった」「よくない里親がいたのに相談をしても里親の肩を持たれた」など自身の経験も語りながら是正を求めている。こうした若者たちがよい未来を築く頼もしい力になっており、子どもの力を引き出すことは国の発展を支える土台だと思う。

大人になっても「やり直しのチャンス」がある

もう1つ、フランスの大きな特徴は、やり直しのチャンスがある点だ。

例えば、16~26歳の若者の就労や進路選択を支える「第2のチャンス高校」が各県にある。筆者が調査した県には4校あり、10カ月間基本給が支払われ、3週間ごとに職場実習と通学を繰り返す。主に仕事を辞めた若者のための選択肢だが、最近では移民も多い。

そのほか、福祉系専門学校の平均入学年齢は31歳で、別の職業や学問の経験者が多い。失業保険の受給中も学び直しができ、例えばパリ市が開催する半年間の講座は、レースや刺繍、カメラ技術、マネジメントや会計などがあり、1万円程度で受講できる。仕事をしながら市民講座に通い、転職する人もいる。

フランスはこのように、親の意向や経済状況に左右されず進みたい道を選べ、やり直しや方向転換ができるようになっている。日本もすべての人が「自分はやりたかったことを実現している」と感じて生きられる方法を用意する国であってほしい。子どもにまで自己責任を求めることをやめ、すべての子どもに機会があることが大事であるという認識が広く共有されてほしいと願う。

(写真:安發氏提供)

執筆:安發明子
東洋経済education × ICT編集部

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