地方銀行が「マイナス金利解除」を日銀に要望 日銀による多角的レビューに関するヒアリングで

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日本銀行が地方銀行のトップに対して行った多角的レビューに関するヒアリングで、地銀側がマイナス金利政策の収益への悪影響を指摘し、改めて解除を要望していたことが分かった。事情に詳しい関係者への取材で分かった。

日銀本店で11月16日に行われた会合には、植田和男総裁ら日銀の幹部と第二地方銀行協会の熊谷俊行会長(京葉銀行頭取)ら第二地銀のトップが出席。関係者によると、日銀は1990年代後半以降の金融緩和が地域経済や銀行経営に及ぼした影響などについて意見を求め、地銀トップから金融緩和の長期化やマイナス金利政策に伴う預貸金利ざやの縮小が、銀行の収益を圧迫しているとの懸念が表明された。

こうした状況を踏まえ、地銀側はマイナス金利政策の見直しを引き続き要望。熊谷会長は政策金利の急激な引き上げは景気に下押し圧力が強まる可能性があるとし、地域経済や金融システム、金融市場に配慮しながら、時機を見極めつつ、金融政策の正常化に向けて歩みを進めていただくことを期待していると語ったという。

植田総裁の就任直後の4月会合で実施を決めた多角的レビューは、過去25年間にわたって実施してきた非伝統的な金融緩和政策の効果を検証し、将来の政策運営に役立てるのが目的。総裁は政策変更との直接の関連性を否定しているが、マイナス金利の撤廃を求める金融機関側の強い要望が、市場のマイナス金利解除観測を一段と強める可能性がある。

4日に開催された多角的レビューに関する第1回ワークショップでは、学術的な議論が中心となり、金融政策運営の変更を示唆するような内容はなかったという。

日銀の初回多角的レビュー、政策変更を示唆する内容はなかったとの声

昨年来の日銀によるイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)政策の修正に伴う国内金利の上昇で、地銀の保有有価証券の含み損が拡大している。それでも地銀側からは、景気回復に見合った金利上昇であれば、銀行経営にプラスの影響が及ぶとの期待感が示されたという。

金融緩和の地域経済への影響に関しては、バブル崩壊、大震災、リーマンショック、新型コロナといったショックが続く中でも、潤沢な資金供給に支えられて金融システムの安定と地域への資金供給を果たすことができたと評価。経済の下支えに一定の成果があがっているとの認識が示された。

日銀広報課はヒアリングの詳細について、非公開で行われているものであり、内容に関するコメントは差し控えるとしている。その上で、多角的レビューの下、実施している会合などで聞かれた意見などについては、適時、公表する資料を参照していただきたいとしている。第二地銀協からは、回答は得られていない。

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著者:伊藤純夫

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