「教育熱心」と「教育虐待」のボーダーライン 子どもを追い詰める教育熱の根底にあるもの

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例えば、子どもに美味しい食べ物をおなか一杯食べさせようとテーブル一杯に並べるのは、何の問題もない。だが、子どもが「もうおなか一杯で食べられない」と言っているのに、親が「せっかく作ったんだから全部食べなさい」と無理やり食べさせれば、子どもは悲鳴を上げてしまうのと同じ、だという。

教育虐待をしてしまう親の傾向の1つとして、武田さんは、学歴などにコンプレックスを持っている場合があるという。とくに母親は、女性であるがゆえに結婚や出産・子育てでキャリアや自分の夢を諦めざるをえず、社会的地位が低いことも少なくない。そのため、子どもを自分の「代理」にして戦わせている、と。

「自分が成功することができなかったため、自分の夢や理想を子どもに託し、『教育』という名の下、子どもを通して自己実現をしようとしてしまいます。しかし、それが子どもには過度の期待と強制になり、じわじわと子どもを追い詰めていきます」(武田さん)

経済的に安定した家庭で起きている

10代後半の子どもたちのシェルターを運営する社会福祉法人「カリヨン子どもセンター」(東京都)事務局長の石井花梨(かりん)さんは、教育虐待をする親の共通点として、「経済的にも安定した家庭で起きている」と話す。

「本来、親が子どもの能力を信じ子どもを後押しでき、加えて財力によって子どもが伸びるよう力を貸せるのは幸せなことです。しかし、それが過干渉、過管理になってしまうと、後押しだったはずのサポートも一方的な押し付けになり、親子関係もこじれます。

いい高校、いい大学、いい会社に就職させることを目標に定め、そこに達成させるのが『いいお父さん』『いいお母さん』という自身への評価につながると錯覚し、親だけエキサイトしていっていると感じます」

同センターが運営するシェルターには、年に数人、親からの教育虐待を逃れ避難してくる子どもたちがいる。石井さんによれば、子どもたちはシェルターに逃げてきた時は傷つき、不安を抱えているという。

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