導入広がる「匿名いじめ通報アプリ」、「いじめ以外の相談が7割」の重要な示唆 約36万人がスマホやGIGA端末にインストール
こうしたさまざまな悩みの相談が、深く掘っていくと実はいじめだったということが多くあり、日頃は優等生と見られる子がいじめの主犯格だったり、皆にわからないよう巧妙にいじめたりしているケースが発覚することも少なくないという。
「明らかないじめの相談の割合が意外に少ないのは、被害者はいじめられていることを隠したいですし、最初から正直に話してくれることが少ないから。また、いじめと認識していないこともあります。いじめを早期発見するには、子どもがいじめを受けている事案ではなく、子どもが悩んでいる状態をいち早く見つけて寄り添うことが何よりも大事なことだと思います」
「学校全体で取り組まなければいじめの解消は難しい」
同社は、2021年から健康観察アプリ「シャボテンログ」も展開している。児童生徒が心身の調子を毎日記録することで、自身の状態を“見える化”するアプリだ。児童生徒は自身の過去1カ月のデータを確認することができるほか、画面上から養護教諭への相談をリクエストしたり、STANDBYアプリにつながったりすることもできる。

学校は、教員用管理画面で1人ひとりの状態の変化を見取ることができる。静岡県浜松市、兵庫県三木市、三重県四日市市、埼玉県戸田市が導入しているが、大人たちがこれまで気づけなかった事態を把握できるようになり、子どもたちのケアがしやすくなったとの声が挙がっているという。
「匿名で相談できる場があっても相談できない子は一定数います。そこを何とかしたいと思っていて、子どものSOSを学校全体で共有できるようにもしたかったので開発しました。子どもたちにいじめのアンケートを行う機能もあり、その結果をリスク分析するサービスも行っているのですが、これによりいじめの認知件数が増えたという学校が多いです。実名回答だけれど、意外にも傍観者だった子どもたちはいじめの目撃情報を書いてくれます。紙よりもウェブのほうが報告しやすいのかもしれません」
谷山氏は、「いじめの被害者が、これ以上頑張らないですむ状態をつくりたい」と語る。今後は自社で相談員を抱え、責任を持って相談を受け止められる体制を整えるほか、いじめ防止教育もさらに広げていきたいという。
ただ、STANDBYアプリのように子どもが声を上げられる仕組みは昨今増えてきたが、学校全体としてチームで取り組まなければいじめの解消は難しいと谷山氏は指摘する。
「重大事態になるのは、1人の先生が抱え込んでしまうケースがほとんど。先生たちはさまざまな経験や知恵をお持ちなので、学校全体で対応すれば解決策も見いだせるはず。先生方がお忙しいことは承知していますが、いじめの対応を最優先として取り組む姿勢も必要です。実際、教員同士が毎週情報共有して専門家の意見をもらうなど、全体で取り組む体制ができている学校はいじめを解決できています。子どもの安心・安全が最重要であることを、学校全体、社会全体でマインドセットしていかなければいけないと思います」
(文:國貞文隆、写真:スタンドバイ提供)
東洋経済education × ICT編集部
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