近年は企業買収を通じて成長に向けた布石を打ってきたキヤノン。新任取締役の候補の人選も含めて、御手洗冨士夫会長兼社長CEOに話を聞いた。
2023年10月、キヤノンが開いた展示会「キヤノンエキスポ」。御手洗冨士夫会長兼社長CEO(最高経営責任者)は、来場者に「キヤノンのいちばん新しい姿を見てもらいたい」と呼びかけた。
社長を退いた時期が2回あるとはいえ、1995年以降、一貫して経営を率いてきた御手洗氏。その目に映る新しい姿とは。頭の中に描く未来像もインタビューの中で見えてきた。
――8年ぶりに開催したキヤノンエキスポで見せたかった「いちばん新しい姿」とは、どういうものだったのでしょうか。
事業ポートフォリオを変えてきた集大成として、将来の成長力を取り戻した姿だ。長らくキヤノンは、今ある自分の技術を磨きつつ、その時代の新しい技術を取り入れながら、その複合技術をもって新しい産業へと入っていった。複写機や半導体露光装置などがそうだ。
ところが、私の時代になってから、そんな悠長なことをしていられなくなった。デジタル化、IT化が進みスマホのような製品が出て、カメラ事業もそうとうダメージを受けた。技術の進歩と産業の入れ替わりが早くなった。そこで、将来伸ばしたいと思う領域にある企業を買う、自分が欲しい技術を買収で手に入れるという「時間を買う」経営方針に切り替えた。
買収は2005年の産業機器から始まった。2010年が産業印刷機で、2015年が監視カメラ、2016年が医療機器。一方で、経営リソースである人と設備を失いたくなかった。不採算だからとパッと捨てるのは日本企業に向いていない。人と設備を維持しながら、成長性のあるものを接ぎ木のように足してきた。そういうスタイルのため、成長力を取り戻す作業に10年ほど要した。
10年先には「宇宙」や「VR」まで
――この10年で作った土台の上に次の10年の成長を築くと。
そうですね。ただ、市場でのシェアがまだ低い。トップシェアになると、価格決定権を持てるので非常に大事。そして、シェアが高くて価格決定権を持っているということは、儲かっていることを意味する。
医療機器だと、CT(コンピューター断層診断装置)は日本でトップシェアだが、外国ではまだ全然。独シーメンスや米GE(ゼネラル・エレクトリック)、蘭フィリップスの後塵を拝している。そこで強化を続けてきた。例えば、MRI(磁気共鳴画像診断装置)ではコイルの会社を買収した。CTでは、フォトンカウンティングCTの強化のための買収をした。
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