問題行動が減り学級崩壊を防げた学校も、徳島県「スクールワイドPBS」の成果 教員の指導力やテスト成績が向上した事例も

その結果、あいさつを増やそうと児童から提案があったり、スリッパの確認を担当する保健委員会の児童が朝会できれいに並べるよう呼びかけたり、主体的な行動が見られるようになった。
「すべての児童に第1層支援が必ずしも有効ではないため、個別的なアプローチが必要な子も巻き込む仕掛けづくりは課題ですが、行動の結果をデータ化することで児童のよい変化が見えやすく、支援の見直しにもつなげやすいです。『hyper-QU』 による学級満足度尺度では、昨年度『自分が学級内で認められていると感じることが少ない』と回答した児童は約20%でしたが、今年は10%未満に減りました」(原氏)
また、教員側にも変化があった。児童のよい行動を見つけたら、名前とその内容を付箋に書いて貼る「にこにこボード」を職員室に設置したところ、教員たちが児童を褒める頻度が上がったほか、「あまり知らなかった児童のことも、もっと知りたい」と思うようになった教員もいるなど児童理解につながっているようだ。
ほかの好事例について、徳島県立総合教育センター特別支援・相談課指導主事の白桃智子氏は次のように話す。

「学級崩壊寸前だった県内の小学校では、SWPBSを導入したところ、児童たちの問題行動が減り先生方の負担が軽減されました。また、ご協力いただいている教育の専門家に伴走いただき授業改善に取り組んだ学校では、教員の指導力が向上し、テストの成績も徐々に上がっています。藍住町立藍住中学校では、生徒会が主体となってポジティブ行動マトリクスの中身を考えるなど、生徒たちがよりよい学校づくりを目指すようになりました。現状、自校の実態に合わせ、授業単位や学級単位、部活単位などやりやすい形で取り組む学校もありますが、PBSは学校規模での実施が効果的です。県としてももっと好事例の共有を行うなどして、学校規模での展開をサポートしていきたいと考えています」(白桃氏)
今後の課題は、県全体としての効果検証だ。田中氏は次のステージについてこう語る。
「今後、組織的に進めていくうえで、問題行動の減少、不登校児童生徒数や学力の変化なども見ていく必要があるでしょう。任意で実施している『Q-U』による学級満足度尺度もしっかり測定し、効果検証したいと考えています」
(文:酒井明子、写真:徳島県教育委員会提供)
東洋経済education × ICT編集部
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら