千葉県知事・熊谷俊人、独自の「子育て・教育支援」推進に込める国への熱い期待 男性育休、自然環境保育、給食費無償へ思い語る
私自身、わが子を保育所に預けていて感じたのは、男性保育士が活躍しやすい環境づくりの必要性。男性が少数派の職場ゆえ、男性保育士は保育所内で孤立しがちです。また、男性トイレや男性専用の着替えスペースがない保育所も多い。これは行政が率先してサポートすべき課題だと認識し、「千葉市立保育所男性保育士活躍推進プラン」の作成に至りました。多様な保育士と触れ合うことは、子どもたち自身の成長にもつながっていくのではないでしょうか。
加えて男性の育休問題です。私は、父親も子どもと長く関わることが大事だと考えています。現在千葉市は、男性の育休取得率が首都圏政令市では断トツでトップです。逆転の発想で「なぜ育休を取らないのか」に焦点を当て、対象者にその理由を記入してもらう運用にしたところ、取得率がぐっと上がりました。
──千葉県は現在「自然環境保育」に力を入れているとお聞きしました。こちらも熊谷知事の子育て経験がベースにあるのでしょうか。
子育てに関わる中で、自然豊かな環境で実践を積み重ねることが、子どもの主体性や創造性を育むということは実感していましたし、教育者に聞いたところ、皆私と同様の意見でした。そこで、日々の保育に自然体験活動を取り入れている団体や施設を県が認証・支援する「千葉県自然環境保育認証制度」を立ち上げたのです。これは、海や里山など自然豊かな千葉県ならではの独自の制度で、千葉県の保育の特長として広めるべく推進しています。
地方で成功すれば国も採用しやすい、先陣切って新施策に挑戦
──千葉県では、2022年度に県内の公立小中学校に通う第3子以降の給食費無償化を実現し、大きな話題になりました。

昨今の物価高の影響もあり、子育て世帯のなかでも特に「多子世帯の経済的負担軽減」は優先順位が高い施策でした。県をあげての無償化は全国初の取り組みということで、発表後はものすごい反響がありましたね。「とてもありがたい」という感想をいただくと同時に「第2子の給食費も無償化にならないか」という声も多く寄せられました。地方は財源が限られていますし、ここからは「異次元の少子化対策」を掲げる国が主導で取り組んでほしいというのが正直な気持ちです。地方自治体の役割は、先陣を切って新しい施策にチャレンジし、事例をつくること。そこで私たちが得た知見やエッセンスを横展開し、国が採用するという流れが理想的なのではと考えています。
給食費の無償化については、知事会でも盛り上がる議題のひとつです。仮に子どもの給食費を一律無償化すれば、子育て世帯だけでなく学校側の負担軽減にもつながります。学校側には、給食費が口座から引き落とされているかの確認や、未納の家庭への連絡など、細かな事務作業が山積しています。給食費の無償化は、教員や事務員の業務効率化にもなるのです。
──ほかにも、子育て世帯や子どもに特化した経済支援はありますか。
子ども医療費助成制度を拡充し、助成後の自己負担に月毎の上限を設けました。2023年8月から、同一医療機関における同一月の受診であれば、入院の場合11日以降、通院の場合6回以降は自己負担額0円です。
また、児童虐待に関わる話として、児童養護施設などで暮らす子どもたち専用の給付型奨学金制度を創設しました。児童養護施設の子どもたちは、一般家庭の子どもたちと比較すると大学等への進学率が半分以下という状況であり、その差をなんとかできないかという思いから生まれたものです。