発達障害の子どもの進路「自己理解」最大のカギ、支援やサポートうまく活用を 特性に適した学校、サポート選びのポイント
大学に進学しても、頼れる人がおらず、中退してしまう子も多くいる。大学では履修登録など主体的に考えなければならない場面が多く、友達などとのつながりも自身でつくらなければならないからだ。発達障害の学生向けに相談室を設けているなど、支援が充実している大学を選ぶのも一つの手。また必要に応じて合理的配慮を求めるなど、困ったら自分で助けを求めることも大事だという。
たとえ大学生活をうまく過ごせても、どこに就職したらいいのかわからない、就職先が見つからないという子もいる。そのため、働く準備をしてから社会に出るという選択をする子もいる。自立訓練(生活訓練)や就労移行支援など、発達障害の子が働く準備をするためのサービスがあり、自分の適性と向き合うこともできる。
ちなみにKaienでは、模擬職場での体験や訓練、書類作成の手伝いや面談練習などで、発達障害の子の就職サポートを行っている。
「このようなサービスを行っている場所はたくさんあります。私たちとしては少しでも早く自分をサポートしてくれる、人やサービスにたどり着いてほしいと考えています。発達障害やグレーゾーンの子どもの中には、高校卒業時の進路を決める直前まで、いっさいサポートを受けたことがないという子もいます。今まで周りが決定したことに従ってきたため、いざ将来について考えたときに、自分の進む道や適性がわからないという子が少なくないのです」(長田氏)
早くからサポートを受けることで、いったい何が変わるのだろうか。
「将来について考えるときに、もちろん夢に挑戦することは大切です。ただ自分のことをしっかりと理解していないと、長くは続きません。例えば、保護者が子どもを見て生活しづらそうだと感じていても、子どもはそう思っていないこともあります。この認識の差が大きいと、子どもは自分に合った道を見つけるのは難しいのです。適切なサポートの中で、子ども自身がしっかりと自分をモニタリングできるようになることが大切です。そうすることで自己理解が進み、安定して働ける場所が見つかりやすくなります」(森谷氏)
そのためにも、できるだけ小さい頃から専門の支援やサービスを受けることが重要ということだろう。自分が苦手なことを周りに伝えることができれば、適切な支援を受けられ生活もしやすくなるからだ。
現在、都市部では、発達障害のある子に向けた支援やサービスが充実している。保護者には子どもの特性を踏まえて、子どもがどこにいると安心して活躍できているか、ぜひ見てほしいという。
そういう場所で育つことで自己肯定感が伸び、自己理解が深まり、自分に合った決断ができるようになる。子どもに合った特性を早く知るためにも、保護者は子どもが小さいうちから普段の生活をよく見ておきたい。
(文:酒井明子、編集部 細川めぐみ、注記のない写真:kapinon / PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら