「給食でアナフィラキシーショック」食物アレルギーの学校対応はどう変わった エピペン注射など教員の意識や除去食に地域差

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※1 局所的な蕁麻疹、何となくのかゆみ、喉のイガイガ感、ちょっとした咳払い、軽微な腹痛や吐き気など

食物アレルギーであれば15分から30分ほど経過すると症状が悪化するため、救急車を呼ぶなどの対応が必要だ。いずれにしても、教職員には初期症状を軽視しない姿勢が求められる。もし緊急を要する症状だと判断した場合、教職員はエピペン使用の判断を迫られるが、伊藤氏は「注射することが責任ある行動で、打たなかったことが落ち度と言われる可能性がある」と言う。

「愛知県の教育委員学会には、毎年20例ほどエピペンの使用が報告されますが、9割は教職員が注射しています。結果的にエピペンを使っていなくても済んだと思われる事例でも、教職員が早めに注射をしたケースもあり、それで良しとされています。持病との兼ね合いなどでエピペンを使用できない人にはそもそも処方されないものなので、教職員はエピペン注射を過度に不安がる必要はありません」

学校現場の食物アレルギー対応は進化しているが、さらに改善できる点があると伊藤氏は言う。その1つが、県や市町村単位のアレルギー対応委員会に、地域のアレルギー専門医に参加してもらうことだ。

「校医が小児科医でアレルギーに詳しければベストですが、現状は内科医が圧倒的に多いと思います。学校ごとに地域の専門医と連携するのは困難なので、せめて自治体のアレルギー対応委員会に専門医を配置することが望ましいと考えています」

食物アレルギーへの理解が皆無であった時代を経て、栗山氏が評価するように学校の対応は大幅に改善されている。しかし、教育委員会や学校など組織で取り組むべき課題と、教員一人ひとりが心がけるべきことは、まだ数多く残されている。食物アレルギーのある児童生徒が安心して過ごせる環境に向けて、さまざまな知見の融合が求められているのではないだろうか。

【参考になるサイト一覧】(栗山氏推奨)

●日本アレルギー学会、厚生労働省「アレルギーポータル」
https://allergyportal.jp/

●文部科学省「学校給食における食物アレルギー対応について」
https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/syokuiku/1355536.htm

●厚生労働省「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン (2019年改訂版)」

●東京都保険医療局「東京都アレルギー情報navi.」
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/allergy/

●公益財団法人日本学校保健会 情報提供事業「学校保健」ポータルサイト 「アレルギー疾患」関連ページ
https://www.gakkohoken.jp/themes/archives/101

●消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/index.html

 

(文:末吉陽子、注記のない写真:Fast&Slow / PIXTA)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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