「給食でアナフィラキシーショック」食物アレルギーの学校対応はどう変わった エピペン注射など教員の意識や除去食に地域差

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食物アレルギーの原因は「卵」「牛乳」「小麦」が有名だが、2014年以降は「木の実類」によるアレルギーの症例数が増加するなど、新たな傾向もある。消費者庁が実施した21年度の全国調査によると、即時型症例数、ショック症例数ともに「くるみ」が多いことがわかった。

小児の食物アレルギーに詳しい伊藤浩明医師は、「近年、食物アレルギーの申請や、エピペンを処方される子どもの割合は若干増加しています。ただ、実数として増加したのか、保護者の意識の高まりなどにより増えたのかは、明らかではありません」と話す。

いずれにしても学校現場では適切な対応が求められるが、個別対応を突き詰めれば給食のオペレーションが混乱する可能性も高まる。伊藤氏は次のように指摘する。

「文部科学省では、原因食物を含む料理に対して、『原因食物を含まない料理を提供する』『その料理を配膳しない』のいずれも『除去食』と定義しています。しかし、この両者では給食のオペレーションは大きく異なります。愛知県では前者を『除去食対応』、後者を『無配膳対応』と呼んで明確に区別していますが、それでも誤配膳は発生します」

学校も徹底的に誤配膳をなくすべく尽力しているが、情報連携のミスや認識の誤りなどで、どうしても避けられないこともあるという。それを踏まえて伊藤氏は、学校現場で意識したいこととして、「原因食物を微量でも摂取すると強い症状を引き起こす子どもへの対応を徹底すること」と「卵や牛乳などは明らかにそれとわかるような調理で提供すること」の2つを挙げている。

「とくに木の実類は、ごく微量でアナフィラキシーショックに至ることもあるので、誤配膳があってはなりません。献立にクルミやカシューナッツをいっさい使わない学校も増えていますが、頻度を減らして提供する場合は、日常的に慣れていない分かえって注意が必要でしょう。かたや小麦や大豆などは、加工食材を含めて幅広く使われているため、完全除去が必要な子は弁当持参もやむをえないと思います。また、卵や牛乳などメジャーな原因食物は、卵焼きや目玉焼きなど明らかに卵を使っているとわかるものにだけ使い、ハンバーグや肉団子などの『つなぎ』には使わないというのが常識になっていると思います」

(画像:ノンタン / PIXTA)

地域の専門医を、アレルギー対応委員会に参加させて

さまざまな対策を講じたうえで、もし、アレルギーのある児童生徒が何らかの体調不良を訴えた場合、教員はどのように対応するべきなのだろうか。

「アレルギーのある子どもが、アレルギーかどうか疑わしいような症状(※1)を訴えた場合、『風邪かな』と考える前に、『アレルギーかも』と考えてあげてください。大原則は、早めに保健室に連れて行き、休ませて経過を観察することです。原因究明は後でいいので、まずこれをつねに念頭に置くことが、すべての教員に求められます。ただし、発見時にすでに明らかなアナフィラキシーの症状がある場合は、その場から動かさずに処置を行います」

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