「学びのユニバーサルデザイン」が、主体的な学びや個別最適な学びに必要な訳 自ら学びを舵取りできるようになるためのUDL
UDLガイドラインには9つの項目があるが、すべての項目があらゆる授業に当てはまるわけではない。その授業に必要な箇所をチェックするというやり方でもよいという。そして、バリアになりうる点が明らかになれば、オプションや代替策を用意する。
「オプションを果てしなく増やす必要はありません。大切なのは、これまでとは違うことを一つずつ取り入れ、柔軟性を教室に取り入れること。すると、子どもたちはいろいろなやり方があることに気づき、『この方法ならできます』と提案してきます。しっくりくる方法を自分で見つけられれば、子どもは主体的に学びの舵取りができるようになるのです」

重要なのは教員のマインドセットの転換
日本でも認知度が高まりつつあるUDLだが、間違った捉え方をされていることもあるようだ。
「自分で舵取りできるようにといっても、学ぶ内容も目標もすべて子どもが決めるわけではありません。授業は先生がデザインするものであり、単元で教える内容も変わりません。また、単元で学ぶべき目標は学習指導要領に沿って先生が決めますが、それと並行して子どもが自分の学習を決めることもあります。例えば、自分は途中で投げ出しがちだから、『諦めずに最後までやる』をゴールにする、といった具合です。このように、UDLはどのように学ぶかを子どもが選べるようにするものであり、決められた学習内容まで変わるわけではありません」
また、「日本は学習指導要領に縛られているからUDLは無理だ」という声も上がるそうだが、個別最適な学びの充実や主体的・対話的で深い学びの実現には、もはやUDLの観点が欠かせないといえるのではないだろうか。
そこで大切となるのは「知識を教える」から「伴走者」へとマインドセットを転換することだ。このマインドセットの転換ができていないうちは、UDLを取り入れた授業を見学してもあまり意味がないという。
「マインドセットが転換していないと、その授業がどんな意図でデザインされているのかが見えにくく、『このアプリを使っているんだな』といった手法に目が行きがち。すると手法だけをまねしたり、『うちでもこれを使っているからいつの間にかUDLをやっていたのだ』と思ってしまうことも。UDLは意図的に授業をデザインすることですから、『いつの間にかやっていた』はありえません。だからこそマインドセットの転換が必要なのです。ただ、先生たちは児童生徒にいかに興味を持ってもらうかをつねに考え、工夫していますから、マインドセットの転換さえできれば、その先はスムーズに進むはずです」
教員が教え、児童生徒が教わるという従来型の学びから、教員が伴走し、児童生徒が主体的に学ぶスタイルへ。そんな学びの転換期を迎える今、さらにUDLに対する注目が集まっていくことだろう。
(文:吉田渓、編集部 細川めぐみ、写真:すべてバーンズ亀山氏提供)
東洋経済education × ICT編集部
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