「最大3600万円の給付型奨学金」足立区長・近藤弥生が教育に力を入れ続ける訳 「教育は経済的な格差を埋める最強の武器」

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「今はICTを使えないと仕事にならないので、子どもたちが『使ったことがない』とならないようにしないと。ただ、ICTは使い方次第なので、対面のコミュニケーションも大切にしながら進めています。ICTを使いこなせない世代の先生もいますから、専門の支援員を配置するなど学校間格差が出ないようにしています」

「教育は経済的な格差を埋める最強の武器」

近藤氏は大学を卒業後、警察官と税理士を経て東京都議に立候補し、3期10年を務めて2007年6月に足立区長に就任した。区長になって驚いたのは、「自分が思っていた以上に足立区がマイナスのイメージで見られている」(近藤氏)ことだったという。

それを強く実感したのは、若者たちの声だ。足立区では、成人式「二十歳の集い」を、20歳を迎えた若者による実行委員会形式で実施しているが、その実行委員たちから毎年「今のイメージでは区民は自己を肯定できず、経済力がつけば区外に出ていってしまう。抜本的にイメージを変えてほしい」と指摘されるという。

「彼らの言うとおりだと思いました。若い人が税金を納めてくれれば持続可能な自治体運営ができ、高齢者を支えることにもつながります。そのためにも、『4つのボトルネック的課題』の解決は急務だと思いました。ただ、何とか頑張って足立区の刑法犯認知件数はピーク時の2001年と比べて約8割も減ったのですが、マイナスのイメージは払拭しきれていません。支援もタマネギの皮を一枚一枚むいていくようなもの。1つの課題に対して支援策を打つと、そこからこぼれる人がいるので、さらに支援を打つ必要が出てくる。これですべての人が救われるというところにはなかなか行き着かないものです」

一方、教育支援に力を入れてきた中では、うれしい変化もある。

「足立はばたき塾に通った子が『二十歳の集い』の実行委員になったり、区役所職員に応募してきてくれたりと、植えた苗は着実に育っています。見返りを期待して支援策を行っているわけではありませんが、支援を受けた方が『社会の役に立つ人になりたい』と言ってくれるのはとてもうれしいですね。教育は経済的な格差を埋める最強の武器。もちろん、大学を出たからといって幸せになれるわけではありませんが、子どもや若者が自分の足で立っていけるよう、区としてしっかり支えていきたい。生きていくうえでの基礎力は、公教育の中でつける必要があると考えています」

課題に一つひとつ取り組み、そのセーフティーネットの網目を細かくしてきた足立区。現在強化している切れ目のない教育支援が、この地域の子どもや若者の未来、そして地域の未来をどう変えていくのか、目が離せない。

(文:吉田渓、撮影:尾形文繁)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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