働き方改革で「残業を減らしている学校」が取り組んでいる4つのステップ リスクを取る役割を校長、教育委員会は盾に
「この学校のカエル会議では“早く帰ろう”とか“残業を減らそう”という議題が上がったわけではなく、生産性を上げようということがテーマでした。学校の水泳指導での教師の役割とは何か?という根本的な問いから出発しました。それで一人ひとりに泳ぎ方を教え込むのではなく、児童の水泳へのモチベーションを高めることに注力すべきだという結論に至りました。そこで放課後水泳指導を廃止する代わりに水泳授業を2時間連続授業にするなど、時間割を工夫することで、水泳大会への参加標準記録突破による出場者数を2.5倍に増加させながらも残業時間の削減につながった好例となりました」
「こうありたい」と考える授業や子どものありたい姿と、現実とのギャップに問題点を見いだし、解決に向けた工夫が業務削減、時間創出、教育の質向上につながる流れこそが、本来の学校の働き方改革だと田川氏は考える。そのためにはコンサルタントが教育内容に踏み込まない節度も必要だという。「私は“働き方”についてはプロだけれど、教育や授業の中身については先生方がプロだという、すみ分けの意識を大事にしています」と話す。
ボランティアの協力を得て一部の業務を学校、教師以外に移行

(写真:岡山県教育庁提供)
同じく岡山県の浅口市立鴨方東小学校は、もともとコミュニティ・スクールを設置している学校だったこともあり、PTA役員と地域住民とで一緒に働き方改革を進めたという。共にカエル会議を行って、理想の学校や目指す子ども像を決めたうえで業務の見直しに着手。とんど祭りやサマーキャンプ、地区懇談会などの行事を削減し、草取りや校内の活花管理、ワックスがけなどは、ボランティアの協力を得て学校、教師以外に移行した。その結果、7カ月で平均残業時間が40.7%減少した。
各学校では、あらかじめ残業時間の削減について数値目標を持つのだろうか。「施策の効果がどのくらいあったのか振り返るときに大事になってきますが、教育委員会や管理職が目標値を持つことはあっても教職員に押し付けることはしません。それでも実際に働き方改革に取り組んでいくと、労働時間が減る一方で、子どもと向き合う時間が増えるのです」と田川氏は話す。

(写真:静岡県教育委員会提供)
そんな教員一人ひとりのタイムマネジメント感覚を養うツールもある。1日の業務と退勤時間の予定を書き出して教員間で共有し、振り返る「カエルボード」だ。
予定外の突発的業務のために1時間分のゆとりを持った予定を立て、1日の終わりには教師自身が時間の使い方を振り返るというもの。民間企業には「朝メールドットコム」としてアプリ化して提供しているサービスだが、学校では予定と実績のズレがわかるなら自由なスタイルで構わないという。