東大など難関大現役合格者多数、効率主義の真逆貫く「小石川教養主義」とは? SSH指定校・小石川中等教育学校の学びの神髄
同校校長の鳥屋尾史郎氏は、進路指導についてこう話す。
「職場体験や大学の研究室訪問などの機会提供やサポートはしますが、とくに受験のための補習も介入もしません。いちばん大事なのは、本人が将来何をやりたいと思っているか。実際、多くの生徒は6年間でやりたいことを見つけ、『これをやりたいからこの大学のこの学部に行く』と自然に進路を絞っていきます」

都立小石川中等教育学校 校長
1986年青山学院大学文学部日本文学科を卒業し、国語科教諭として都立高校に着任。東京都立の中高一貫教育校を立ち上げるため、2002年度に私立中高一貫教育校での長期研修に派遣される。都立白鷗高等学校・附属中学校副校長、都立桜修館中等教育学校校長などを歴任し、21年4月より現職。これまでの中高一貫教育校での経験を生かして、小石川中等教育学校で、より高い教育レベルの達成を目指す
最近の傾向としては難関大学に挑戦する生徒が増えているほか、昨年度は東京芸術大学に3名が合格するなど進路先の幅も広がっているという。「ちなみに芸大を受けた1人はバスケ部で音楽経験がないにもかかわらず、小石川フィロソフィーで『歌い手になるボイストレーニングの方法』を研究し、その独自のメソッドによって声楽科に現役合格しました」と鳥屋尾氏は話す。
本人の自主性を何より尊重する方針の土台には、同校ならではの教育理念がある。

(画像:小石川中等教育学校提供)
同校では1918(大正7)年の創立以来、教育理念「立志・開拓・創作」を守り続け、この理念に基づき「小石川教養主義」「理数教育」「国際理解教育」を3本柱としている。

(写真:小石川中等教育学校提供)
「とくに小石川教養主義の徹底が本校の特色です。これは6年を通して文系理系のクラス分けをせずに全員が全科目を学習するという考え方で、小石川フィロソフィーの活動もその1つ。広い知識や教養が身に付かなければ人は育っていきません。大学に受かればいいという効率主義とは真逆の本校のやり方は、遠回りに見えるかもしれませんが、実はこれこそが人を育てる近道であり、王道だと考えています」
文理を分けない教養主義を重視しつつ、SSH認定校の同校では理数教育に力を入れている。
「新学習指導要領の改訂を機に、昨年度『理数探究基礎』を4年生の科目として新設しました。データの扱い方や科学の倫理に重きを置きながら、実験で得られたデータを統計分析ソフト『R』や『MATLAB』でどう処理するかなど、数学と理科をリンクさせた授業を行っています。今年度からは、5年生に『小石川サイエンス』を導入しました。生物と化学を横断しながら内容を深掘りするなど、SSHならではの授業を試行錯誤しながら行っています」