東大など難関大現役合格者多数、効率主義の真逆貫く「小石川教養主義」とは? SSH指定校・小石川中等教育学校の学びの神髄

「数独は一般的に9マス×9マスの構成ですが、私は4×4×4の立体数独の性質を研究しています。当初は何となく数独をテーマに選びましたが、そこから興味が広がりました。気になったことを調べて自由に探究できる小石川フィロソフィーの時間は楽しいですね。この授業がなかったら、きっと数独をやっていなかったと思います」
「部活動」や「行事」に全力、学外の大会にも自ら参加
同校の生徒たちが、積極的に取り組むのは学業だけではない。運動部と文化部を掛け持つなど兼部は珍しいことではなく、行事にも全力投球だ。とくに毎年9月、1週間で芸能祭・体育祭・創作展を集中的に行う「行事週間」は、生徒一人ひとりが何かしらの役割を担い、大いに盛り上がるという。5年生の鈴木里菜さんは、昨年の行事週間をこう振り返る。
「私は去年、初めて委員会の立場で照明班として芸能祭に関わったのですが、舞台に出る人も裏方もこんなに頑張っているんだな、みんな自分の役割や責任を果たそうとしているんだな、と感動しました。この日のために夏休みを費やして準備をしたので、達成感がすごかったですね」

(写真:小石川中等教育学校提供)
鈴木さんは、勉強や学校生活に打ち込む生徒が多いことは受験前から知ってはいたが、いざ入学してみると、その実態は想像以上だったという。
「理数系が好きな人は多いですが、国語が得意な人や社会問題に関心がある人、プログラミングがすごくできる人など、いろんな人がいる面白い学校です。さまざまなことに頑張る生徒が多く、やりたいことさえあれば何でもできるいい環境だということも実感しています」
鈴木さん自身、ラクロス部と英語研究会に所属するほか、物理研究班では自律移動型ロボットの設計も担当する。昨年参加した「東大グローバルサイエンスキャンパス」で知り合った他校の友人と一緒に、食料問題に関する情報を発信する活動も行っているという。
鈴木さんのように学外にも飛び出す生徒は少なくない。例えば毎年、国内外の理数分野をはじめとする各種大会に参加する生徒がたくさんおり、2022年度も国際生物学オリンピック優秀賞および文部科学大臣特別賞や、日本数学オリンピック本選優秀賞(日本代表候補)など、優れた成績を収める生徒が多数いた。
前述の山下さんも、数独だけでなく、3年生から独学で学び始めた競技プログラミングでも成果を出している。4年生で「日本情報オリンピック第1回女性部門」の優秀賞を受賞、5年生の時には日本代表として「ヨーロッパ女子情報オリンピック」に出場して銅メダルを獲得した。
「各種大会は教員が勧めるものではない」(德田氏)といい、生徒たちは自らの希望で申し込んでいるという。
「小石川教養主義」こそ「人を育てる近道であり王道」
部活動や行事に思い切りエネルギーを費やすだけでなく、学内外の場を問わずやりたいことを深掘りする生徒たち。その進学実績を見てみると、2022年度卒業生153名の大学合格延べ数は、東京大学(15名)など国公立70名、早慶上理を含む私立大学487名。現役合格率は91.5%、現役進学率は85%となっている。例年より学校推薦型選抜や総合型選抜に挑戦した生徒も増え、学校推薦型(公募型)では東大に3名、一橋大学に2名が、総合型では東京工業大学、東北大学、九州大学にそれぞれ1名が合格を果たした。