年間100超の学校・教員に「ばん走」する石川晋、依頼が後を絶たない納得理由 授業づくりの提案から学校課題解決の相談まで

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そのタイミングで石川氏は、磯氏に「国語の教科書では、パネルディスカッションのテーマは『地域の防災』になっているけれど、あえて教科書とは異なるテーマに変えた理由は何ですか?」と聞いた。

「防災がテーマだと、子どもたちにはちょっと難しくて自分事として考えにくく話しづらいのではないかと思いました。また『学校が大好き』という児童が多いので、『学校のよさ』なら身近なテーマで話し合いやすいと思いました」と述べる磯氏。

そこで石川氏は、「『学校のよさ』という身近なテーマでパネルディスカッションを行うことにより、得られたと思うことと失われたと思うことについて、みんなで話してみましょう」と、教員たちに再度対話を促した。

最後に石川氏は、「磯さんの授業は、クラスの雰囲気がとてもよかったです。子どもたちの発言を聞きながら、『家庭科は僕も苦手だな』『言わなくてもみんな知ってるし』など、緩やかでちょっとユニークな合いの手のような言葉を挟むことで、子どもたちはディスカッションしながらしきりに相づちを打っていました。教室全体が楽しげな雰囲気だったのは、磯さんの日頃の関わりの賜物ですね」と、よかった点を褒め、子どもたちの質問力を上げるための教員としてのアプローチの必要性や、次の単元のパンフレット作りの目的や伝えたいターゲットに何をどのように伝えるのかをより明確にすることが、質問力の向上につながることなどについて、平易な言葉で伝えた。

石川氏の総評を受け、「今日で3回目の研究授業をさせていただきましたが、経験が成長につながることを実感しています。うまくいかなかった点が、たくさんあります。人前でこんな経験をさせてもらえるのはうれしい反面、悔しさもあるので、明日にでもまた、研究授業をやりたいぐらいです」と、目を輝かせる磯氏。そのポジティブな姿や磯氏を囲む教員たちから醸し出される空気から、ばん走が及ぼす多大な影響力が伝わってきた。

“点”が増えていくことで、学校全体の土壌がよくなっていく

教員の長時間労働、精神疾患の増加、教員不足。今の学校教育現場は、ばん走者・石川氏にはどのように映っているのだろうか。学校に元気を取り戻すには、どうしたらよいのだろうか。

「『どこの学校がどうです』など具体的なことは言えませんが、体感として、学校教育の現状自体はどんどん深刻になってきているように感じています。子どもたちの人間関係がしんどい教室、担任不在の教室などが増え、内部のリソースだけで展開していくのは極めて困難な状況の中、日々地をはうようにして頑張る先生方の姿には心を揺さぶられます。

僕にできるのは、僕の半径数メートルの場所で、自分の見えるところを丁寧に見ながら対話をベースに先生方と一緒に進んでいくこと。自分にできることを愚直にやり続けるしかないと思っています。ただ、先生コーチングでも学校コンサルティングでも、関わり方は異なるけれども僕のような学校を支援する“点”が全国レベルで増えていけば、学校全体の土壌はよくなっていくのではないでしょうか」

石川氏がばん走に入った学校同士が地域の垣根を越えてつながり、情報交換したり、お互いに授業を見に行ったりするケースも少なくないという。また、教員個人のばん走の際は、その授業に他校の教員が見学に来ることもあり、そこで教員同士のコミュニティーが生まれ、お互いに切磋琢磨することもある。

「ばん走は恐ろしく疲れるけれど、学校や教職員と苦楽を共にしながら一緒に進んでいくことが恐ろしく楽しい」という石川氏。

「ばん走は、僕が最初に始めた一人です。パイオニア(笑)だからこそ、金銭的なことも含め1つのモデルのようなものを示す必要があると思っています。学校を元気にしていくためにも、今後僕のような動き方をする人が増えていくことを願っています」

(注記のない写真:今井康一)

東洋経済education×ICTでは、小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。
長島 ともこ フリーライター&エディター

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ながしま ともこ / Tomoko Nagashima

育児、教育、PTA、暮らしのジャンルを中心に、書籍、雑誌、PR紙、WEB媒体において取材、執筆、企画、編集、講演等の活動を行っている。また、自身のPTA活動や記事執筆を機に、全国のPTA仲間と「PTA・保護者組織を考える会」を立ち上げ、情報発信やイベントの運営、PTAやP連からの相談活動等を行う。

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