年間100超の学校・教員に「ばん走」する石川晋、依頼が後を絶たない納得理由 授業づくりの提案から学校課題解決の相談まで

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1時間ほどのオンライン対話でのやり取りも否定しませんし、オンライン対話は僕も行っていて大切だとは思いますが、僕が学校現場に実際に入って行っている伴走とはまったく異なるものだと思っています。ちまたに多く存在する『伴走』と自分の仕事とは違っているように思えて、ある時期から『ばん走者』と名乗るようにしています」

石川氏のばん走のパターンは、

・ 呼ばれた先生個人の授業を見て、その先生と振り返りをする。
・ 呼ばれた先生の教室で授業をする。
・ 校内研修の講師として授業づくりや学級づくりについて提案する。
・ 校内研修のデザインとファシリテーションを丸ごと担当する。

以上の4つで、教職員や学校のニーズを聞きながら必要に応じてこれらを組み合わせることが多いという。

「例えば、ばん走を依頼してきた先生から『うちの学校では協働学習が全然行われていないから、学校中を“協働色”に染めてもらいたい』など、願いを込めて声をかけていただくケースもあります。その場合でも、僕自身の知識や経験から『その方の理想を実現するために何をするのか』を助言するのではなく、その学校のスタイルやこれまでの経過、校長先生の思いなどを重ね合わせながら、その学校にいちばんよい形をつくるために、どうお手伝いをさせていただくのがよいのか。そこをスタート地点として、先生方と一緒に考えながらばん走しています」

ばん走4年目を迎える江戸川区の公立小では

2023年6月のとある日。石川氏の「ばん走」の様子を一日見学させてもらった。訪れたのは、江戸川区立鹿骨(ししぼね)東小学校(児童数:465、学級数:16、校長:中田伸代)。

特別支援教室拠点校で、学区外からも多くの児童が通う。21年度は江戸川区教育課題実践推進校として、SDGsの視点を取り入れた学校づくりに取り組んだ。

石川氏のばん走は、今年度で4年目を迎えるという。校長を務める中田氏は、こう話す。

「私は前任校では副校長だったのですが、国語の授業研究を行った19年、現場の教員から『石川先生を講師に呼びたい』と声が上がり、1年間で6回来ていただきました。当の石川先生から『“飛び込み授業”をさせてほしい』『子どもたちの様子を見たい』と言われ、全学年に国語の授業をしていただいたのですが、私自身も非常に学びになりました」

中田伸代(なかた・のぶよ)
江戸川区立鹿骨東小学校 校長

20年から鹿骨東小学校の校長に就任。期せずして同校でも国語の授業研究を行うことになり、迷わず石川氏にばん走をお願いしたという中田氏。

「初任の教員が多かったこともあり、授業力や学級経営力の向上が喫緊の課題でした。子どもたちにとって、わかる楽しい授業でないと、学校が“我慢の時間”になってしまいます。“我慢の時間”にしないためには教員が授業を頑張るしかないのですが、初任者が最初からわかる楽しい授業を行うのは困難ですし、学級経営がうまくいかず授業までたどり着かないクラスが出る可能性もあります。石川先生にばん走をお願いし、教職員が『できる』『わかる』授業づくりの楽しさを味わい、笑顔で授業を行っていくことで、子どもたちの幸せにつなげたいと思いました」(中田氏)

20年度はコロナの真っただ中だったが、石川氏は年間7回学校に足を運び、国語の飛び込み授業も行った。密を避けるため各学年の授業はビデオに撮り、校内Teamsのオンライン会議で石川氏を交え研究協議会を行いながら学びを深めていったという。

「石川先生は、難しいことをいっさい言わず、一緒に考え、その先生、その学校に合わせた助言をくださいます。私は校長なので、学校として抱える課題や学校経営の悩みをお話しすることもあります。石川先生は『僕はマネジメント経験はないですから』とおっしゃいますが、全国のたくさんの学校の景色を知っている先生からの助言は本当にありがたく、私にとっては校長のばん走もしていただいているつもりでいます。先生の言葉で、教職員も、校長である私も元気をもらえます。石川先生は、教職員、学校に『もっといい授業をつくりたい』『もっといい学校にしたい』と思わせてくれるファシリテーターなんです」(中田氏)

飛び込み授業を担任が見ることで、担任自身の成長に

この日のばん走は、3、4時間目に2クラスある6年生の各クラスで国語の飛び込み授業(同じ単元)を行い、5時間目に6年2組の国語「パネルディスカッションをしよう」の単元の研究授業を見たうえで、6時間目に校内の教員による研究協議会のファシリテーターを務めるという内容だ。

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