ボーク重子「非認知能力」教育に大きく舵切る、京都市立開建高校を総力取材 「80人が一緒に学べる教室」で、生徒の目が輝く

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重子:それが、この教育目標である、協創者になるために必要な6つの資質と能力「挑戦力」「対話力」「思いやる心」「学び続ける力」「協働力」「貢献志(こうけんし)」なのですね。大学に入学する子どもたちの半数以上が総合選抜や推薦の今、この6つの資質を鍛えるって大学受験の準備に最高じゃないですか?

宮越:そうですね、必ず自分について語れるようになると思います。自分は、どういう人間なのか。社会に対してどんなことをしたいと思っているのか。こういうことを話せる生徒にはなれると。これは推薦や、入試でも絶対に役立つ力だと思います。

重子:実際の授業は、どんなふうに行われるのですか?

宮越:生徒に考えさせる、ということを大事にしていますね。例えば「研修旅行」を例に挙げます。研修旅行は、こちらで中身を決めていません。6つほど、拠点の候補をこちらで挙げて、それぞれの拠点で何ができるのか、そもそも「何がしたい」からその拠点を選ぶのか、ということを考えてもらう。そこに行って「海でこういうことをやりたい」とか「山でこういうことをやりたい」とか「町だからこういうことができるよね」といったことを考えてもらうのです。「これをやりたい、そのためには私たちは、東京を拠点に選ぶ」、そういった流れです。そのようなことを考えさせる授業が木曜日と金曜日の午後に入っています。それ以外は普通の国語とか数学など教科の授業もやっています。

重子:まさに答えのない問いに、自らの正解を探す作業ですね。ところで、開建高校のキーワードの「協創者」とは、どういう意味なのでしょうか?

尾崎:これは造語なのですが、協働して新しいものをつくっていくという意味です。新しいものをつくっていくには、必ず、他者と「対話・協働」をしていく必要がある。自分を理解し、他者を理解する。これからの時代は、そうやっていかなければならないだろうと。そういう意味でこのような言葉を作らせてもらいました。

重子:クラスの名前も、普通科ではなくて「ルミノベーション科」。こちらも新しい言葉を作られたんですもんね。なんだか新しいことが始まる感じがします。

授業で使用する「コアスキルカード」。カードにはRPGゲームのようなイラストとともに、「受け止めてみる」「予想してみる」などのスキルが書かれており、探索や、分析などのスキルを楽しく身に付けることができる

まるで、コワーキングスペースのような教室「L-Pod」

重子:そしてこの80人が一緒に学べる大きな箱、「L-pod」って、今までの学びの環境を一変するくらい画期的だなと思う。でも同時に、そもそもどうして今までなかったんだろうという感じもします。だって社会に出たら、静かな環境の中で一人で黙々と机に向かうというより、いろんな人がいる中で仕事をしますよね。

宮越:まさにそうなんです。学生時代は、前を向いて机で一斉に授業を受けて、社会に出たら全然違う。だから、むしろ学生時代から、社会に出たときのような環境をつくらないと、行ったときにしんどい思いするのは子どもたちだと思うんです。80人の部屋の中で、グループワークをしている人、調べ学習をしている人、先生に質問している人がいたり、少し離れたところで先生の話を聞いている人たちがいるというようなことが、同時に起こりうる授業になってほしいなと思っていまして。

「L-pod」のイメージパース。広い「L-pod」内では、生徒がいろいろな学びを実践できる
(開建高校提供)
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