「戦争」抜きに語れぬ小津映画、その核にあるもの 『小津安二郎』書評

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『小津安二郎』(平山周吉 著/新潮社/2970円/400ページ)
小津安二郎(平山周吉 著/新潮社/2970円/400ページ)
[著者プロフィル](ひらやま・しゅうきち)/雑文家。1952年生まれ。慶応大学文学部卒業。雑誌、書籍の編集に携わってきた。昭和史に関する資料、回想、雑本の類いを収集して雑読、積ん読している。著書に『江藤淳は甦える』『満洲国グランドホテル』などがある。

娘の結婚や家族の別れを描く繊細な家庭劇だと思って見ていると、ふと不可解なセリフやシーンに出くわす。感動のどこかにそれらが引っかかったまま、ずっと残る。多くの人が戦後の小津映画から受ける印象だろう。

「あたくし、猾(ずる)いんです」。『東京物語』(1953年)で原節子が演じる、戦死した次男の妻、紀子の言葉が、それだ。あるいは遺作となった『秋刀魚の味』(62年)で主人公、笠智衆と戦中の部下だった加東大介が「軍艦マーチ」のレコードがかかる場末のバーで交わす会話。「けど(戦争に)敗(ま)けてよかったじゃないか」。本筋と無関係なのに長く記憶にとどまるシーンだ。

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