少子化対策や防衛費の増額に向け、他分野の歳出削減を想定する岸田政権。安易な帳尻合わせは危険だ。
このところ、日本社会の持続可能性を脅かす指標が明らかになっている。国立社会保障・人口問題研究所が発表した将来推計によれば、現在1億2450万人の人口が、2070年には8700万人に減る。また、そのときには日本に定住する外国人の割合が全人口の10%に達する。65歳以上の高齢者は3400万人に増え38.7%を占める一方、生産年齢人口は現在の7500万人から4500万人にまで減る。
政府・与党の指導者は、口を開けば、わが国を取り巻く安全保障環境の悪化と危機感をあおるが、真の危機が何か、わかっているだろうか。
医療や介護などのケア労働では、人手不足が一層深刻になるのが必至だ。推計は外国人が増え続けると単純に予想するが、その頃の日本はアジアの人々にとって出稼ぎに行きたくなるような豊かな国であり続けているだろうか。そもそも、排外主義丸出しの入管難民法改正を急ぐ政府の下で、外国人を日本社会のメンバーとして適切に位置づけることができるだろうか。
終盤国会の2つの重要テーマ、防衛財源と子育て対策についての岸田文雄政権の「熱意」は明確だ。しかし、防衛費の財源確保策にしても、社会保険料上乗せによる少子化対策の財源確保にしても、問題に正面から取り組んだ解決策というより、とりあえず帳尻を合わせるという安易な発想の表れだ。社会保険料は政治的な抵抗が少なく財源を確保できる手段だが、低所得者ほど負担が重くなる「逆進性」があり、少子化対策の恩恵とは無関係の人々の間に怨念を生み、分断をつくり出すおそれがある。
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