子どもの摂食障害、「やせ願望」なくても発症する回避・制限性摂食障害の原因は 脳の萎縮や多臓器に影響する前に早期発見を
一方、ARFIDは不安から食物を摂取できない状態ですので、経口が難しい場合はいったん口から栄養を摂取するのを休んでもらい、胃にチューブを入れて高カロリーの栄養剤を注入するなどで対応します。また、食べること以外にも不安を感じている場合がありますので、心理療法も重要になります。子どもの場合、不安があること自体をなかなか表現できません。そこで、カウンセラーと話すだけでなく、遊戯療法や芸術療法などを通じて少しずつ不安感を低減させていくこともあります。
早期発見のカギは身長体重と成長曲線
──摂食障害は早期発見が重要だとお聞きしました。それはなぜなのでしょうか?
小・中学生は体も心も柔軟なので、大人に比べると寛解する期間も短く、また寛解する確率も高いです。慢性化する前に早期に発見し、早いうちから再びちゃんと栄養を取り始めるのがよいでしょう。小・中学生で神経性やせ症になったまま高校・大学生になるまで治療が遅れると、今度は過食症に陥ってしまうケースが多くなります。
これはダイエットの気持ちがあっても過食してしまうというもの。過食だけでなく、食べたものを吐く、下剤を乱用するといった排泄行為も伴います。過食症は、精神疾患の併存が多く、うつ病の次に自殺企図が強い病気です。また成人まで持ち越すと、窃盗や万引きといった犯罪行為の併存症につながることもあります。
摂食障害は長く放置すると命に関わる可能性がある病気です。成人まで慢性化すると低栄養で亡くなるおそれもあり、また低栄養が続けば脳の萎縮や多臓器にも影響します。そのため、とにかく早期発見が重要なのです。
──摂食障害に気づくには、どのような点に着目するとよいのでしょうか?
子どもの場合、「身長・体重が伸びていない」というのが1つの目安になります。成長期は体重も身長も伸びるものですから、停滞している場合には栄養障害が考えられます。学校では定期的に身長・体重を計測しますから、そのデータに基づいて成長曲線をきちんと見るだけでも早期発見につながるでしょう。
子どもの摂食障害に最初に気づいた人の割合は、家族が50%、学校関係者が21.7%です ※2。学校では養護教諭が異変に気づくケースが多いですが、担任の先生が児童・生徒の給食の様子を見ていて気づくこともあります。
一方で、家族は毎日子どもを見ているからこそ、少しずつの変化に気づきにくい側面があります。また最近では、子どもと一緒にご飯を食べない家族が増えました。実は、神経性やせ症の子にはまじめで成績優秀な子が多いのです。小学3、4年生くらいから塾通いや習い事をしているケースも多く、家族と晩ご飯を食べる機会が少ないためになかなか気づかれないことがあります。子どもと食事をする回数を増やすことや、家族の会話を増やすことも摂食障害の早期発見につながるでしょう。

(画像:Fast&Slow / PIXTA)
※2 作田亮一, 2020年「子どもの摂食障害の問題点」『女性心身医学』vol.24, No.3, pp288-291