アルトターボRSがワークスを名乗らぬ理由 スズキの軽スポーツ、乗って分かった実像

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心地よい一体感があるハンドリングには、専用にチューニングしたサスペンションだけでなく、剛性を高めた専用ボディも効いていることに違いないと感じた。足まわりは引き締まっているものの、乗り心地も悪くない。これも上質な乗り味を目指したようなテイストだ。

そういえばスイフトにも本格的な走りを追求したスイフトスポーツと標準モデルの間に、欧州テイストを追求した「RS」というモデルがあるが、それに通じる印象だ。ようするにアルトターボRSは、あくまで「RS」であって「ワークス」ではない。

2ペダルMTでは物足りない

もうひとつ、アルトターボRSで特徴的なのが、トランスミッションがAGS(オートギアシフト)のみの設定とされたことだ。

AGSは、スポーツモデルの代名詞でもある3ペダル(アクセル、ブレーキ、クラッチ)のマニュアルトランスミッション(MT)と基本的な仕組みは同じではあるものの、アクセル、ブレーキの2ペダルだけで運転ができ、ドライバーの代わりに機械がクラッチを操作する。

実際に試してみるとセミオートマとしてはよくできているほうなのだが、どうしても変速時に駆動抜けするし、変速の制御を自分の支配下に置けないことにはストレスを感じる。スポーツモデルに求められるダイレクト感に欠けるのだ。すでに、「3ペダルのMTが欲しい」という消費者の声がすでに寄せられているという。筆者も実際にドライブして、さらにその思いが強まった。この手のクルマは、やはり3ペダルMTこそが楽しい。

2000年にひっそりと姿を消した最後の「アルトワークス」

スズキの開発関係者によると、アルトターボRSに3ペダルMTをラインアップに加えるかどうかは、「市場の反応を見て」としている。
一方で、アルトターボRSとは別に、スズキは本当にアルトワークスの再来というべきクルマの開発を進めている可能性もなくはないようだ。
もしそれが現実のものとなるのなら、スズキはそちらに3ペダルMTを採用するつもりかもしれないし、むろん我々としても、そのクルマはぜひ3ペダルMTであって欲しいと願わずにいられない。アルトターボRSとアルトワークスの関係が今後どうなっていくのか楽しみだ。

岡本 幸一郎 モータージャーナリスト

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おかもと こういちろう / Koichiro Okamoto

1968年、富山県生まれ。大学卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の編集記者を経て、フリーランスのモータージャーナリストとして独立。軽自動車から高級輸入車まで、国内外のカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでも25台の愛車を乗り継いできた経験を活かし、ユーザー目線に立った視点をモットーに有益な情報を発信することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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