男子にも学年にも影響、高学年「女子」が学級安定のキーパーソンになる訳 関係構築に重要な「受け入れてもらえる安心感」
「2:6:2」で構成される教室に、女の子が及ぼす効果とは
古舘氏は自身の経験から、高学年女子のベストな扱い方を探ってきた。だがその効果について語るとき、女子児童と教員との関係だけでなく、学級や学年全体についての言及にまで広がることが印象的だった。「女子児童の心をつかむには、男子児童と教員の仲がいいことを見せるのも大切です」と笑い、男の子の扱いももちろんおろそかにはしない。
「教室は2割の積極的な子ども、6割の平均的な子ども、さらに2割の消極的な子どもで構成されていると思います。この6割のサイレントマジョリティーともいえる子どもたちのモチベーションを上げるためにどうするかも重要だと考えています」
古舘氏の学級経営の作戦はこうだ。まず積極的な2割とよく関わり、教員が伝えたいことの『理解者』として育てていく。彼らには、いずれは教員の指示がなくても自ら動いてくれるようになることをも期待している。消極的な2割の子どもに対しては、教員がことさらに指導することは避ける。
「特定の子どもにいつも教員が寄っていくと、ほかの子どもに『ああ、またか』『あの子はできない子なんだ』と思わせてしまうことになり、教室の序列を強固にしてしまう。それは当人にとってもつらいことですよね。教員よりも自然に、彼らにスッと寄り添って手助けしてくれるのが、積極的な層の子どもなのです」
この役割は、目立つことをいとわない男子児童が負うことが多い。だが実は、そうした男子児童をうまく動かしてくれるのが女子児童なのではないかという。
「教員と目が合っただけでこちらの意図を察してくれたり、女の子が男の子に声をかけたりしてくれることはよくあります」
中学受験熱も高まる昨今では、低年齢における別学のメリットが見直されてもいる。だが公立の小中学校で圧倒的に多いのは共学だ。古舘氏は「女子に『よろしくねー』なんて言われるとうれしいという男子は多かったりします(笑)。男子児童と、彼らを頑張らせてくれる女子児童の双方がいるということを前提に教室を運営しています」と言う。だが決して、女子児童に過剰な役割を求めているわけではない。
「彼女たちの成長は心から期待していますが、教員が必ず変えられるなどとは思っていません。といって『無理だろう』と諦めるのではなく、『変わるかもしれない、そうなるといいな』という気持ちです。教員の『諦め』は子どもたちに伝わります。相手が高学年女子であればなおさらでしょう」
高学年女子との関係構築は、学級や学年の雰囲気に明確に影響する、と古舘氏は言う。だがそのための特効薬があるわけではなく、高学年女子との信頼関係が学級運営の飛び道具になるわけでもない。「この記事を見てくれる方も拍子抜けするかもしれないし、僕自身もこの結論に出合ったときはズッコケましたが……。結局は人対人なのだから、コツコツ子どもと向き合い続けること。それがすべてだと思います」
(文:鈴木絢子、注記のない写真:buritora / PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部
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