全国800人が参加の「英語教員がちサロン」、運営・費用1人で担う教員の正体は Slackや共有ドライブに約600のデータ蓄積

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2つ目は、冒頭でも述べたように教員が忙しすぎること。授業準備や雑務に追われる中で、スキルアップの時間を取るのが困難な教員は多い。江澤氏は隙間時間でも勉強しやすいように、サロンではSlackを採用。通勤中などでもスマホからアクセスできる環境を整えたが、それでも時間は足りないという。

そして3つ目は、上記のように多忙な状況の中でも、教員に求められる英語のレベルがどんどん高くなっていることだ。

「英語の授業レベルは、年々難しくなっています。例えば、中学卒業までに覚える英単語は20年前に800単語だったのが、今は2500単語にまで増えました。以前は高校で習得していた文法が、今では中3の授業に前倒しされたものもあります。生徒も大変だと思いますが、教員も学び直しが必要になりました」

英語の授業法や勉強法も新しいやり方が次々と発明されており、サロンでもよい方法の共有や提案が行われるそうだ。例えば、「教科書を5回読む」という有名な勉強法があるが、これを提唱した人物をサロンに招いて直接話をしてもらったこともあったという。サロンには、忙しい中で授業をアップデートできる機会が豊富にあるようだ。

江澤氏は最後に、英語がちサロンの課題も語ってくれた。サロン運営は現在、入会対応から交流会開催まで江澤氏が一人で行っており、運営費も個人的に捻出している。スポンサーを募集したこともあるが、大手企業は前例のない事例には消極的で、行政は認可に時間がかかるなど対応が遅いため不向きだ。

「がちセミナーで著名な方にもぜひ講演をしてもらいたいのですが、それにはどうしても費用が必要です。またこの先も長く続けるために、今後どのように運営費を捻出するかは考えていかなくてはなりません」

江澤氏にとってサロンはライフワークであり、「今は継続していくことが目標」だというが、理想としては、リアルな交流と「1中学校1サロンメンバー」の実現を考えているそうだ。

「全国には約1万校の中学校がありますが、もっともっとメンバーが増えて全校から教員が参加すれば、日本の英語教育を変えられる可能性もあると考えています。これからも、英語教育に興味のある人にどんどん参加してほしいですね」

たくさんの同僚と「よりよい英語教育」を考える英語教員がちサロン。今後は学生や予備校関係者など教員以外の視点も交えつつ、全国規模の職員室としてさらに発展していくことだろう。

(文:酒井明子、注記のない写真:CORA / PIXTA)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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