全国800人が参加の「英語教員がちサロン」、運営・費用1人で担う教員の正体は Slackや共有ドライブに約600のデータ蓄積

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(画像:江澤氏提供)

「参加者は多い月で50人ほどです。『がちトーク』のテーマは例えば『お勧めの教科書指導法』や『お気に入りの副教材』。一方『がちセミナー』では、プロに英単語の覚え方を話してもらったり、時には英語の枠を超えて教師のウェルビーイングや生き方などもテーマになりました。自分から情報を取りにきていますから、やはり意識の高い教員が多い印象ですね」

現在は中学の英語教員だけでなく、小学校・高等学校・大学の先生をはじめ、教材会社の社員、全国の取り組みを知りたい教育委員会、また教育現場について知りたい教育学部の大学生などさまざまな人が参加し、サロンメンバーは設立から1年半で800人に達した。

授業のやり方に悩むのは若手だけではない

ではサロンメンバーは主にどのようなことに悩んでいるのだろうか?

「いちばん多い悩みは、授業の仕方がわからないというものです。もちろん大学の教職課程で一般的なことは学びますが、実際の現場では通用しないことも多い。時代や地域、生徒によって対応が異なるからです。そして、こうした悩みは卒業したばかりの若い教員に限らず、実は30代の子育て世代が多く持っているのが特徴です。子育てに忙しくて勉強する時間が取れない、育休で2〜3年休んだら今の教育現場がわからなくなったという声も聞きます」(江澤氏)

教科書は4〜6年に一度、学習指導要領も10年に一度改定されるため、若手・ベテランを問わず教える側の悩みはずっと続く。しかし同僚と話し合う機会や時間はなく、さらに小規模校ではそのような同僚さえいないという教員もいた。

それが、このサロンで全国の800人が一気に同僚になる。「相談しやすく、仲間ができたという安心感を得られた」「サロンが情報源&学びの場になっている」「授業で困ったときにサロンのデータを見るとヒントがもらえる」などの声も集まっているという。

「これまで、研修に参加してもなかなか情報交換までいけないことが気になっていました。そもそも研修だけでは視野は広くならないし、かといって偉い先生の講演を聞けばそれが正しいと思ってしまう。サロンのようにラフに話せる場だからこそ、若い先生も発言しやすく、質の高い議論が行われるのだと思います」(江澤氏)

同僚が800人に増えたことで、一人では膨大な時間がかかる作業も効率よくできるようになった。例えば過去には、授業に使える洋楽をまとめた「がち歌リスト」、中学で学ぶ全文法を集めたクイズアプリ「Kahoot!」、3年分の英単語帳などを作成している。いずれもがちDriveのデータも使いつつ、手分けして短時間で完成した。今後もメンバーが発案した企画を含め、さまざまなことを実現したいそうだ。

英語レベルの向上、運営費の捻出など課題も

英語教員がちサロンによって解決される悩みもある一方で、英語教員を取り巻く環境にはまだまだ課題が多い。江澤氏は大きく3つを挙げる。

1つ目は、小学校と中学校の英語教育の連携が取れていないこと。現在、小学校では600~700単語、中学校では1600~1800単語を習うことになっている。しかし小学校の授業はゲーム性が強く、中学校に入学した時点では履修単語をうまく使えない生徒が多い。そのため、実際には中学校で小中の約2500単語分を扱っているイメージなのだそうだ。将来の受験も意識している中学校と、英語に慣れ親しむことをメインに考えている小学校とで、英語に対する考え方や姿勢に乖離があるといえる。

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