教育の分野で活躍する専門家が選ぶ「学校教育関係者」にお薦めの本10冊 GWを知識とスキルのアップデートに役立てよう
というのもダークホースたちの多くは途中で学業やキャリアを脱線し、型破りなルートをたどった後に成功しているからだ。YouTuberなどを思い浮かべるとよいかもしれない。自身の充足感、好きなことを追求していく姿がそこにはある。従来型の成功法則にとらわれがちな教師や保護者、また高校生、大学生らに読んでほしい。進路指導と呼ばれるものもアップデートが必要だと思う」
9. 『ライフロング・キンダーガーテン 創造的思考力を育む4つの原則』(著:ミッチェル・レズニックほか)

デジタルガレージ 取締役 兼 専務執行役員Chief Architect
(撮影:梅谷秀司)
なぜ、興味を追求するような探究型の学びが重要になるのか――。AIやロボットなどデジタル技術が進化するにつれて、人間は従来とは異なる役割を担わなければならなくなるからだ。知識やスキルに長けたAIやロボットに支えられ、協力し合いながら生きる世界を子どもたちは歩んでいく。
「創造的な思考と学びの大切さが認識されつつあるにもかかわらず、いまだ多くの学校が講義を通して教え、テストによって成功を測っている」
現在も多くの学校で行われているこうした教育環境に、デジタルガレージ取締役の伊藤穰一氏は警鐘を鳴らす。そんな伊藤氏が推薦するのは、『ライフロング・キンダーガーテン 創造的思考力を育む4つの原則』(著:ミッチェル・レズニックほか/日経BP)だ。
「本書は、プログラミング言語『Scratch(スクラッチ)』の開発者であるミッチェル・レズニックが、探究し、実験し、自らを表現する機会を子どもたちに提供し、創造的な思考の持ち主(創造的思考者)として成長してもらうために、創造的な学び(Creative Learning)という考え方をどのように進化させ、深めていこうとしているかを知ることができる。『急速に変貌する世界で生き残るためのコンパス』ともいえるこの書籍を、ぜひ保護者、教育者など多くの人たちに手に取ってほしい」
つねに変わり続ける世界を生き抜くことができるよう、子どもたちを創造的思考者に育てるために大人はどうしたらよいのか、どう振る舞えばよいのか。「子どもたちは、自ら進んで自分にとって大事なものを創っているときに最もよく学ぶ」というミッチェル氏の師匠の理論を進化させた一冊である。
10. 『中学校・高等学校 授業が変わる学習評価深化論』(著:石井英真)

京都大学大学院教育学研究科教授、日本教育方法学会理事、日本カリキュラム学会理事
(写真:西岡氏提供)
2020年に小学校、21年に中学校、22年に高等学校でスタートした新学習指導要領。「知識及び技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力、人間性等」という育成を目指す資質・能力の3つの柱に合わせて、新たな評価の「3観点」として「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」が設けられた。
だが、適切な評価をどう行ったらよいか。頭を悩ませる教員は多い。最後はこの観点別評価をテーマに、京都大学大学院教育学研究科教授の西岡加名恵氏に選んでもらった。西岡氏が選んだのは、『中学校・高等学校 授業が変わる学習評価深化論』(著:石井英真/図書文化社)だ。
「観点別評価は、目標観や指導観の転換、多彩な評価方法についての理解なしに取り組むと、単に煩わしい事務作業となってしまいます。本書では、『児童生徒の学習評価に関するワーキンググループ』の委員を務めた著者が、なぜ観点別評価が求められているのかについて、丁寧に解説しています。さらに、各地の学校で取り組まれた豊かな実践例を紹介しつつ、具体的な単元計画の立て方、すなわちパフォーマンス評価の考え方を生かした課題や評価基準の開発、指導の展開までを提案しています。
とくに、『学力の三層構造』を踏まえつつ『学びの舞台』をつくる、そこに向けて生徒を育てるという提案は魅力的です。Q&A形式で作られていますが、これまでの研究や実践の厚い蓄積がぎっしりと詰め込まれた一冊です。タイトルには『中学校・高等学校』とありますが、すべての学校段階の先生方のご参考になることと思います」
(注記のない写真:Fast&Slow / PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部
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