しなさいと言わない子育て(著:ボーク重子)
「ゲームをやめなさい」「歯を磨きなさい」「靴をそろえなさい」。あなたは1日に何回「しなさい」と言いますか? 「しなさい」と言わずに済むならば、どんなに気持ちが穏やかだろう。言わずとも自分でやる子なら親として、なんとうれしいことだろう。そう思いつつも、ついつい口に出てしまう言葉が「〜しなさい」ではないだろうか。
だが、「しなさいと言わない子育て法がある」と話すのがボーク重子氏だ。ボーク氏は自己肯定感や自己効力感、自制心といった数値化できない非認知能力を調査・研究し、子育てにおいて実践するパイオニア。そんなボーク氏の最新刊『しなさいと言わない子育て』(著:ボーク重子/サンマーク出版)は、ボーク流子育ての基本が、最も簡単にわかる入門書、しかも漫画版だ。
漫画だからサクサク読めてしまうことはもちろん、子どもとの関わりの中で大切にすべきことがわかり、改めて親子関係について考えるきっかけを与えてくれる一冊だ。
私がハーバードで学んだ世界最高の「考える力」(著:廣津留すみれ)
日本の公立高校から海外大学に進学する子が、少しずつだが出てきている。以前は、海外大学に直接進学するのはインターナショナルスクールや国際バカロレア出身の子が多くを占めていた。それが渋谷教育学園幕張高等学校や広尾学園高等学校のようなトップクラスの進学校へと広がり、まだまだレアではあるものの「公立高校から海外有名大学に進学」という例も増えている。
その一人である廣津留すみれ氏は、大分県の県立高校から独学で米ハーバード大学に現役合格し、首席で卒業。さらには世界最高峰のジュリアード音楽院も首席で卒業したバイオリニストだ。今はコメンテーターを務めるなどテレビで活躍しているので知っている人も多いかもしれない。
『私がハーバードで学んだ世界最高の「考える力」』(著:廣津留すみれ/ダイヤモンド社)は、そんな廣津留氏のハーバードでの経験を基に思考力の鍛え方や問題解決力の高め方、作文能力の高め方など、受験や仕事にもすぐに役立つ59のルールを紹介している。海外大学で得た学びとは、どんなものなのかをうかがい知ることのできる一冊だ。
米国トップ大学受験バイブル(著:尾澤章浩、向井彩野)
こうした海外トップ大学に進学を目指す高校生が増えている一方、海外進学について十分にサポートできる体制が整っている学校は少ない。そのため日本の大学を受験する以上に本人、保護者の準備が欠かせない。
『米国トップ大学受験バイブル』(著:尾澤章浩、向井彩野/PHP研究所)は、文字どおり米国のトップ大学への合格ノウハウをまとめた一冊だ。本書は、2022年にハーバード大学を卒業した向井彩野氏が、自身が苦労した海外大学の受験準備に関する情報を「誰でもどこででも手に入る本」としてまとめたいと、海外トップ大学進学塾RouteH塾長の尾澤章浩氏に持ちかけて生まれたという。
受験プロセスの最初から最後までまとめられており、海外大学進学を視野に入れている家庭は一度は目を通しておきたい。
元バカによるバカのための勉強100カ条(著:でんがん)
子育てや教育関連本において、やはり根強いニーズがあるのが受験や、そのための勉強法を扱ったものだ。中でも「偏差値○から有名大学に合格した!」というようなキャッチーな成功例は、ついつい手に取ってしまう本だろう。
『元バカによるバカのための勉強100カ条』(著:でんがん/SBクリエイティブ)は、わずか1年で偏差値が40から70に上がったでんがん氏初の勉強本。今やチャンネル登録数170万人超の人気理系YouTuberとなったでんがん氏が、いかに大阪大学に合格したのか。自分の得意や苦手を把握して、どんな勉強法で成績を伸ばしていったのかが細かく記されている。
本人曰(いわ)く「手のかかる子だった」というから、わが子の将来が心配という親御さんはもちろん、成績が伸び悩んでいるというお子さんにも気軽に薦めることのできる一冊だ。
成功する子は「やりたいこと」を見つけている(著:中曽根陽子)
一方、デジタル化が進み変化の激しい社会において、「どれだけ知っているか」という暗記型の知識は通用しなくなっている。これからの未来を生き抜く子どもたちに必要なのは、「何がやりたいのか、何ができるのかを考え、自分で道を切り開いていく力」と話すのは、教育ジャーナリストの中曽根陽子氏だ。
『成功する子は「やりたいこと」を見つけている』(著:中曽根陽子/青春出版社)では、この「自分で道を切り開いていく力」の源となる「探究力」を育てる方法を、中曽根氏が豊富な取材とエビデンスに基づいて解説している。
今、学校においても自ら問いを立て課題を解決する力を養う「探究学習」が重視されている。そんな探究力を家庭で育てるヒントを得られる一冊だ。
13歳からのアート思考(著:末永幸歩)
そんな学校教育の中で重視される探究学習の一環として、アートに取り組むことを勧めているのがアーティストでありながら東京学芸大学の個人研究員を務める末永幸歩氏だ。
『13歳からのアート思考』(著:末永幸歩/ダイヤモンド社)はベストセラーにもなっているため知っている人は多いかもしれないが、STEAM教育やリベラルアーツに注目が集まる中で、いま一度見直しておきたい一冊といえる。「そもそもアートとは、答えがないものと向き合い、自分なりの物の見方をつくり、自らの答えを考えること。これは現代で求められる生きる力そのもの」と末永氏は話す。
本書では、こうした生きる力を育む「アート思考」のプロセスをわかりやすく解説している。
発表がうまくなる!好きになる!10歳から知っておきたい魔法の伝え方(著:鈴木深雪)
『発表がうまくなる!好きになる!10歳から知っておきたい魔法の伝え方』(著:鈴木深雪/日本能率協会マネジメントセンター)は、伝える力を家庭で育てるヒントが詰まった一冊だ。
著者の鈴木氏は、小学校から高等学校までの子どもたちが「子どもの先生」になり、Zoomで見ず知らずの大人たちに思い思いのテーマを発表するオンライン講座「子どもが教える学校」を主宰。これまで多くの子どもたちに自分の思いを伝える秘訣を教えてきた。
大人でもプレゼンテーションは苦手という人は多いが、本書では「伝えたいことの見つけ方」に始まり、「話の組み立て方」「見せ方」「話し方」に至るまで、わかりやすく「伝え方」のコツを紹介している。
貯金すらまともにできていませんが この先ずっとお金に困らない方法を教えてください!(著:大河内薫、若林杏樹)
22年にスタートした高校の新学習指導要領では、歴史総合や情報Iなど大きくその内容が変わったが、新科目「公共」では金融経済、家庭科では資産形成に関する授業がスタートしている。
これまで「お金に関する教育」は、あまり学校になじまないとする考え方もあったが、日々の生活に欠かせない「お金」について知ることは将来、子どもたちの役に立つに違いない。税理士である大河内薫氏は、かねて「お金の教育を義務教育に」というスローガンの下、啓発活動を行ってきた人物だ。
そんな大河内氏の『貯金すらまともにできていませんが この先ずっとお金に困らない方法を教えてください!』(著:大河内薫、若林杏樹/サンクチュアリ出版)では、NISAやiDecoなど節税しながら資産形成ができる投資制度、保険、年金、投資信託など、今さら聞けないお金の悩みを漫画でわかりやすく解説してくれている。
「貯蓄から投資へ」と言われて久しいが、その流れは遅々として進んでいない。学校教育においても「お金の教育」が取り入れられた今、改めて親世代もお金の知識をアップデートしてはいかがだろうか。
マンガ 脱・「不登校」2(著:加藤善一郎)
不登校の児童生徒数が、9年連続で増加し今年も過去最多となったことをご存じだろうか。実際に不登校の子を抱える保護者の悩みは尽きないことと思うが、今や不登校はどこの家庭でも起こりうる事象になっている。
そんな不登校の背景にある「起立性調節障害(OD)」と複合する発達特性をマンガでわかりやすく解説したのが『マンガ 脱・「不登校」2 起立性調節障害(OD):長期化する「OD複合型」への対応』(著:加藤善一郎、マンガイラスト:河西哲郎/学びリンク)だ。
漫画では「長期化する不登校の要因」「起立性調節障害が改善されても、なぜ学校に通えないのか」を中心に物語が描かれ、起立性調節障害や発達特性を改めて正しく理解するとともに、WISC検査への評価やIQだけではわからない隠された「知的アンバランス」の存在などを明らかにしている。本人が何にどう困っているのかを整理し、本質的に起立性調節障害や不登校を改善していく姿が描かれている。
PTAのトリセツ(著:今関明子、福本靖)
最後に紹介するのは、昨今全国の学校で問題となっているPTAのあり方について考える際に手助けとなる一冊『PTAのトリセツ〜保護者と校長の奮闘記』(著:今関明子、福本靖/世論社)だ。
子どもが在籍している間に「一度はPTAの役員をやらなければならない」という学校が多いため、「しぶしぶ手を挙げた」「本当に必要なのか?と思う活動が多かった」「保護者同士で意識の違いがあり運営に苦労した」など、PTAの問題点を指摘する声が増えている。
そんな中、本書にはPTA不要論を覆す逆転の発想でさまざまな問題を一つひとつ解決して新たな組織をつくり上げたPTA改革の顛末がまとめられている。実際に校長としてPTA改革を指揮した福本氏と、PTA会長として一緒に改革を進めた今関氏の著作だけに、説得力がある。
(注記のない写真:amadank / PIXTA)