教育の分野で活躍する専門家が選ぶ「学校教育関係者」にお薦めの本10冊 GWを知識とスキルのアップデートに役立てよう

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6. 『15歳からの社会保障』(著:横山北斗)

福嶋尚子(ふくしま・しょうこ)
千葉工業大学工学部教育センター 准教授
(写真:福嶋氏提供)

子どもを理解するのに役立つ本を、また別の視点から選んでくれたのが、千葉工業大学工学部教育センター 准教授の福嶋尚子氏だ。

福嶋氏は教育行政学、教育法学が専門で、公立学校運営に関わるお金の問題や、学校生活を送るためにかかるお金についても研究する立場から『15歳からの社会保障』(著:横山北斗/日本評論社)を薦める。

家族、学校、お金、仕事、住まい、体調など、生活の困り事に対応するための社会保障制度についてまとめられた本で、お金に関する社会保障制度を一覧できるようにもなっている。

15歳からの社会保障 人生のピンチに備えて知っておこう!
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「社会福祉士であり児童福祉政策の立案にも参画している著者が、10の物語を通じて社会保障の仕組みをわかりやすく教えてくれる。タイトルのとおり、子どもから大人まで、登場人物の苦難やピンチに心を寄せながら、どう自分や大事な人の身を守るかを学べる本」だという。

調べればインターネット上で何でも検索できる時代だが、それでも福嶋氏は本書の意義は大きいと話す。「社会保障制度の存在を知らなければ、利用することができない」からだ。

「さらに、子どもと関わる大人は、本書を通じて子どもを含むさまざまな人の困難を知ることができる。それは、身近な子どもや保護者の困難を理解することにも役立つはず。本書をまねると、『困難を知ろうとする目がなければ、理解することができない』。自ら読んだ後、ぜひ学校の図書館にも一冊所蔵を希望してみてほしい。一人でも多くの当事者と、当事者を取り巻く人に届いてほしい本です」

7. 『脳はこうして学ぶ』(著:スタニスラス・ドゥアンヌ)

村中直人(むらなか・なおと)
臨床心理士、公認心理師、Neurodiversity at Work 代表取締役、一般社団法人子ども・青少年育成支援協会代表理事(共同代表)
(撮影:村中氏提供)

「ChatGPTが登場し、多くの人にとって“賢い”AIが一気に身近なものになりました。しかしそれでも、『人間の子どもたちはAIよりはるかに学ぶのがうまい』のです」

こう話すのは、臨床心理士の村中直人氏だ。村中氏は「脳の多様性(ニューロダイバーシティー)」の推進活動をしており、脳・神経由来の異文化相互理解の促進および働き方・学び方の多様性が尊重される社会の実現を目指している。2008年から多様なニーズのある子どもたちが学び方を学ぶための学習支援事業「あすはな先生」の立ち上げと運営に携わり、「発達障害サポーター’s スクール」を通じ、支援者育成にも力を入れている。

そんな村中氏が選んだのは、『脳はこうして学ぶ 学習の神経科学と教育の未来』(著:スタニスラス・ドゥアンヌ/森北出版)である。

脳はこうして学ぶ:学習の神経科学と教育の未来
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なぜ人間の脳は(現行の)コンピューターより学ぶのが得意なのか。 身の回りの人の顔を覚えたり、母語の発音を覚えたり、数字の記号を覚えたりするとき、脳の中では何が起こっているのか? 数学・読字・意識など、脳の各種能力について数々の発見・新理論を構築してきた神経科学者が、そのすべてを包含するテーマ「学習」に挑んだ一冊だ。

「本書は人が学ぶメカニズムを神経科学の視点から、わかりやすく私たちに伝えてくれます。こういった脳の学び方に関する知識は、教育だけでなく人間理解そのもののアップデートにつながる話だと思います。こうやったらうまく学べますという技術論やテクニックの話ではなく、本質的に『私たちはいったいどうやって学んでいるのか』、その仕組みや効果、限界を知ることは、これからの教育を考えていくうえで必須の前提知識となるのではないでしょうか」

8.『Dark Horse 「好きなことだけで生きる人」が成功する時代』(著:トッド・ローズほか)

妹尾昌俊(せのお・まさとし)
教育研究家、一般社団法人ライフ&ワーク代表
(写真は妹尾氏提供)

変化の激しい社会を生き抜く力を身に付けるため、これまでの知識詰め込み型の学びから探究学習へと、子どもたちの学びが大きく変わろうとしている。

大学入試においても、学校推薦型選抜・総合型選抜が全体の5割超となり、従来型の一般入試の割合が減っており、今後は高等学校や中学入試のあり方も変わっていくといわれている。自身の興味や物事に取り組む姿勢が評価の対象となる中で、学校教育関係者も親も、そろそろこれまでの教育観を見直す時が来ているのではないだろうか。

『Dark Horse 「好きなことだけで生きる人」が成功する時代』(著:トッド・ローズほか/三笠書房)は、そんな従来の成功法則に一石を投じる一冊だ。本書を薦める理由を教育研究家の妹尾昌俊氏はこう話す。

Dark Horse(ダークホース) 「好きなことだけで生きる人」が成功する時代 (単行本)
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「本書では、予想を覆して勝利する人々、今まで見向きもされなかったのに突然快進撃を始め、成功する人のことを『ダークホース』と呼び、米ハーバード教育大学院の研究者が分析している。『明確な目標を設定し、懸命に取り組み、目的地に到達するまでコースから外れるな』という従来の成功法則は、例えば、医者になりたいなら医学部へといったものだが、この時代に合いにくくなっているかもしれない。

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