アントニオ猪木氏は、エリツィン氏に会えず落胆していた。筆者は、猪木氏と波長が合いそうなアルクスニス・ソ連人民代議員ら何人かの国会議員と会わせた。猪木氏は新たな人脈ができたと喜んでいた。
猪木氏の訪問の受け入れ窓口となったボイチェフスキー氏らが用意したのは、準迎賓館であるオクチャブリ第2ホテル(現在はロシア大統領府総務局が運営するプレジデント・ホテル)だった。このホテルは通常のルートでは予約できない。このことは、ボイチェフスキー氏にソ連共産党中央委員会とつながる特別の人脈があることを意味していた。しかも寝室、応接間のほかに会議室があるスイートルームだった。各国共産党の委員長や書記長クラスの泊まる部屋だ。
カストロ議長が取り持つ縁
猪木氏は、ボイチェフスキー氏が設定する宴会や会食は「体調がよくない」との理由ですべて断り、食事はいつも筆者と一緒にすることになった。2階の食堂で夕食を済ませた後、1階ロビー横のバーで、2人でワインを飲んでいた。すると筆者が親しくするリトアニア共産党(ソ連派)第2書記のヴラジスラフ・シュヴェード氏が近寄ってきた。
シュヴェード氏は「マサル、この人はモハメド・アリと戦った有名なレスラーのアントニオ・イノキさんじゃないか」と尋ねた。筆者は「そうだ。今は上院(議員)も務めている」と答え、猪木氏にシュヴェード氏を紹介した。猪木氏は旅行する際にはかばんにアルバムを入れている。それを見せながら自己紹介した。その中にキューバのフィデル・カストロ議長とのツーショットがあった。
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