中学生の学校での行動を縛る「調査書(内申書)支配」、よい子競争の岐路 生徒の個性や適性と高校をどう結び付けるか

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合格者の75%を占める第1段階で、まずは内申書をベースに対象者を決めることから内申書重視という印象があるが、佐藤氏は「第3段階では総合的に評価しており、現状では学力検査のウェートは適切と考えている。中学校段階では学力検査での一発勝負では力を出せない子がいます。現状では生徒を多面的に評価する総合型の選抜になっており、広く受け入れられていると考えています」と話す。では今後は、どのような方向で見直しを進めていくのだろうか。

静岡県の一般選抜の方法

・学校裁量枠(学校が独自に設定する入学枠、募集定員の50%まで)
文化的・体育的活動/学科への適性/中学校における学習/探究活動 など

・共通枠
第1段階:内申書の学習の記録における評定で校内順位を出した後、上から入学定員と同数の受験者を対象にし、学力検査の得点が高いものから合格者の75%を決定
第2段階:内申書の9教科評定以外の記述や実績、面接に着目して合格者の10%を決定
第3段階:すべての選抜資料を対象に総合的に評価して合格者の15%を決定

「まずは内申書の簡素化、オンラインの活用による出願手続きの簡素化など、実務的なところから着手していきます。また生徒が、高校選びをしやすくなるように地盤を整えたい。単に成績に基づいて学校を選ぶのではなく、スクールポリシーやミッションを参考にしながらよりベストな学校を選べるように、ホームページでの情報発信など地盤を整えて引き続き課題に取り組んでいくつもりです」(佐藤氏)

この内申書の簡素化は、長時間労働が常態化する学校現場で教員負担の軽減として考慮すべき視点であり、今後もほかの自治体に広がっていく可能性がある。その中で、生徒の個性を多面的かつ総合的にどう評価するのかとなると、入試の多様化や評価ポイントを学校ごとに変えるなどの方法が併せて広がっていくのではないだろうか。

大学入試においても推薦入学の拡大をはじめ、学力検査のみならず調査書や小論文、面接などを活用して、受験生の能力や適性などを多面的かつ総合的に評価しようという方向にある。だが入試の方法が多様化する一方で、複雑化してわかりにくいという声も多い。

「高校入試も大学入試も、定員を超える志願者がいるために仕方なく選抜を行っている。入試制度を変えて教育改革をしようと考えるのは本末転倒です。受験生の負荷を増やさないことが肝要であり、入試制度を変える際には受験生のことを第一義に考え、有識者や関係者に広く意見を聞きながら改革を進めてほしいですね」(中村氏)

入試ゆえに公平性や透明性を担保するのはもちろんだが、受験生や学校現場の負担を軽減しながら、いかに生徒の個性や適性と高校を結び付けるのか。自治体の手腕が問われるところだろう。

(文:編集部 細川めぐみ、注記のない写真:各自治体資料より)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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