中学生の学校での行動を縛る「調査書(内申書)支配」、よい子競争の岐路 生徒の個性や適性と高校をどう結び付けるか

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一方、愛知県は23年度から入試制度を大きく変更した。これまでどおり2校に出願できる制度に変わりはないが、学力検査を1回にして受験生の負担を軽減するとともに、全校で採点基準が同一となるようマークシートを導入。内申書・学力検査・面接(一部の学校)で合否を判定するが、内申書の評定(45点を2倍にした90点満点)と学力検査(22点×5教科の110点満点)の比率を3通りから5通りに増やしている。

これまでの「Ⅰ 内申書90+学力検査110」「Ⅱ 内申書135(評定を1.5倍)+学力検査110」「Ⅲ 内申書90+学力検査165(得点を1.5倍)」に加えて、「Ⅳ 内申書180(評定を2倍)+学力検査110」「Ⅴ 内申書90+学力検査220(得点を2倍)」で校内順位を決定する方式を追加した。

愛知県「校内順位の決定方式」ⅣとⅤが新たに加わった
Ⅰ 内申書90+学力検査110
Ⅱ 内申書135(評定を1.5倍)+学力検査110
Ⅲ 内申書90+学力検査165(得点を1.5倍)
Ⅳ 内申書180(評定を2倍)+学力検査110
Ⅴ 内申書90+学力検査220(得点を2倍)

23年度の各学校の選択状況は全体の約3割がIでいちばん多く、学力検査重視のⅢが22.3%、Ⅴが22.8%、内申書重視のIIが14.2%、Ⅳが7.1%だった。新たに2つの方式を取り入れた理由について、愛知県教育委員会 高等学校教育課の担当者は「中学校でふだんの学習をがんばったことや、 学力検査で実力を発揮できることなど、各高校が入学する生徒に期待するものを、これまでよりも明確に示すようにするため」と話す。

今回取り入れた学校や学科の特色を生かして選抜を行う「特色選抜」と、導入意図はまさに同じだという。「特色選抜」では農業・工業・商業などの専門高校に加え、理数、体育、外国語、国際教養に関する学科などを持つ一部の高校で面接に加えて作文、基礎学力検査、プレゼンテーション、実技検査(以上のうち1つ)によって選抜を行っている。

調査書(内申書)、出願手続きの簡素化を皮切りに高校の魅力発信へ

目下、現行の入試制度を見直している最中という自治体もある。

「何かを急に変えないといけないというわけではないが、つねに現状維持ではいけないという意識はある。静岡県では昨年、県議会で内申書の扱いなどについて指摘を受けたこともあり、現行制度について検証委員会を立ち上げ有識者から意見をいただいているところです」

こう話すのは静岡県教育委員会 高校教育課の佐藤典幸氏だ。静岡県の高校入試には、各学校が独自に設定する「学校裁量枠」と、学力検査・内申書・面接で合否を判定する「共通枠」による選抜がある。

「学校裁量枠」は、学校が独自に設定する入学枠で、ほとんどの学校が設定している(募集定員の50%まで)。部活動の実績などを評価する「文化的・体育的活動」、理数科や工業科などの専門学科が設けている「学科への適性」のほか、「中学校における学習」「探究活動」などの観点から希望制で志願者を募集している。実技検査や聞き取り検査、適応力検査、レポート・作文などで合否を判定する。

一方、「共通枠」の選抜には3段階のプロセスがあり、少し複雑だ。まず第1段階では、内申書の学習の記録における評定で校内順位を出した後、上から入学定員と同数の受験者を対象にし、学力検査の得点が高いものから合格者の75%を決定する。第2段階では内申書の9教科評定以外の記述や実績、面接に着目して10%を、第3段階ではすべての選抜資料を対象に総合的に評価して残りの15%の合格者を決定する仕組みになっている。

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