「ランドセル通学」が家計と子どもの心身に負担を与えるこれだけの理由 置き勉を認め、無償配布なら選択肢を残すべき

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※3フットマーク「ランドセルに関する意識調査」2022年

子どもの荷物も教員の仕事も増やす「置き勉」

毎日、身体の許容量を超えた荷物を背負い通学している子どもたち。子どもにとって、自分の状態を自覚して言語化するのは難しい面もある。高野氏によれば、心身の不調と荷物の重さとを結び付けられず、本人も家族も「学校に通うのが嫌いになったのだ」と思い込んでしまうケースもあるのだという。

いったい、解決策はあるのだろうか。高野氏は「持ち物を減らして、荷物の総重量を軽くするしかありません」と話すが、「しかし現状では、多くの学校が置き勉を禁止しています」と危惧する。

置き勉の禁止については、前述の福嶋氏も疑問視している。

「置き勉の禁止も、ランドセルの使用を前提としていますよね。はたして、自宅で使わない教科書やノートまで持って帰る必要があるのでしょうか。通学かばんが小さければ、そうした指導はできないでしょう。もし盗難防止が理由なら個人ロッカーで対応できますし、自分の持ち物を管理する力をつけさせたいのなら、方法はほかにもあるはず。宿題のためというなら、本当に必要なものだけを持ち帰ればよいでしょう。

そもそも、学校教育が授業で完結せず家庭に持ち込まれるというのは、子どもの自主学習の時間を奪うことにもなります。学校側も、置き勉や宿題、指定かばんなどルールを作ると、それに伴って確認や指導などの業務が生じてしまいます。いっそやめてしまえば、教員の負担も軽くなるはずです」

体への負担減らす、ランドセルの正しい背負い方

とはいえ、学校で置き勉が認められるにはまだ時間がかかると思われるほか、すでに購入したランドセルを使い続けるケースも多いだろう。子どもの負担を減らすにはどうすればいいのか、高野氏に教えてもらった。

ランドセルと背中の間に隙間ができないように密着させて背負ってください。ランドセルの位置を腰あたりまで下げる子がいますが、重心が下がると斜め下に引っ張られる形になり、体がバランスを取ろうと前傾姿勢になるため腰や首に負担がかかります。肩ベルトを調整して、重心を上げるようにしてください。もし、チェストベルトがあればぜひ使いましょう。荷物を胸全体で支えられるので体が安定し、肩や腰への負担も減らすことができます」

また、中の荷物の入れ方にも工夫が必要だという。

「とくに低学年のお子さんの場合は、まずは無駄なものを入れていないか確認して、適切な量にしてあげてください。また、ランドセルの中で荷物が揺れると体が前後に引っ張られます。これでは乗車中に急ブレーキや急発進をしたような状態になり、首などに負荷がかかってしまいます。隙間ができないように荷物を入れるか、バンドなどで中身を背中側に固定するとよいでしょう」

ランドセルにはもちろん特別な魅力もある。丈夫で荷物がたくさん入り、小学校生活への期待を喚起させてくれる。当然ランドセルを使いたい子や、とくにランドセルに不満がない子もいるだろう。しかしながら、家計が苦しいにもかかわらず高額なランドセルを「買わなくてはならない」状態は考えものだ。それも、子どもの好みや体格と関係なく、周りの目を気にしてのことであれば余計に問題だろう。

せっかくの新しい学校生活を前に、親の財布にも子どもの心身の健康にも不安が残るようではもったいない。一度、「ランドセル以外の選択肢」にも目を向けて、許容範囲を広げてみてはどうだろうか。

(文:吉田渓、編集部 田堂友香子 注記のない写真:ハル / PIXTA)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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