コロンビア人のマルセーラは小柄でチャーミングな女性だ。16歳の頃からシングルマザーで、経済的に困窮していた21歳のとき、親切そうな男に500ドルを用立ててもらった。男は、「仕事を紹介する」など言葉巧みに彼女を欺き、国外へ連れ出した。
飛行機に乗るのも初めてだったマルセーラが異国に着くと、「5万ドル返さなきゃいけない」「お前は売春婦になるんだよ」と告げられた。逃げれば家族を殺すと脅された。日々売春を強要され、周りでも、中南米、ロシア、中国から来た女性たちが同じ被害にあっていた。暴力団から逃げてコロンビア大使館に駆け込むまでの18カ月間、彼女は奴隷として搾取され続けた。
これは20年ほど前の東京での出来事である。常連客の日本人は当初、「お前は誘拐なんかされてない、(中略)もっと金をせびろうって魂胆か」と言い、彼女が誘拐されたことを信じなかったという。
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