「フォーエバー21」3年半ぶり日本へ静かな再上陸 前回に比べ電子商取引中心で店舗規模も縮小
「ZARA(ザラ)」や「H&M(エイチ・アンド・エム)」と共に、かつて世界のファストファッション文化の一翼を担った「Forever21(フォーエバー21)」が21日、3年半ぶりに日本再上陸を果たした。東京・銀座や大阪・心斎橋の一等地に大型店舗を構えた以前と異なり、電子商取引(EC)中心で店舗規模も縮小。静かな再出発となった。
米国発のフォーエバー21は2009年に日本進出したが、19年9月には日本の民事再生法にあたる米連邦破産法11条の適用を申請。国内にあった14店舗は閉鎖を余儀なくされた。昨年9月、伊藤忠商事がブランドの国内ライセンス(商標使用権)を取得し、「ニコアンド」などのブランドで有名なアダストリアと組んで展開することを決めた。
今回はアダストリアが子会社を通じて、自社の通販サイト「.st(ドットエスティ)」などで販売を開始した。運営を担う子会社ゲートウィンの杉田篤社長は「ドーンとバズらせることが目的ではない」と話す。息の長いブランドを目指して3年後の黒字化、5年後の売上高100億円を掲げる。
ファストファッションでは、中国発の「SHEIN(シーイン)」が台頭し、ファーストリテイリング傘下の「GU(ジーユー)」ブランドも順調に成長している。インフレ高進で消費者の選別の目が厳しくなる中、フォーエバー21が日本に根を張ることができるか注目が集まる。
杉田氏は「商品をそのまま日本に持ってきても、当然合うものもあれば合わないものもあり、合わないものの方が多い」と話す。日本人に合うサイズ感と品質を追求するため、輸入に頼ることなく、商品の約8割は自社で企画する。
既に約1500万人の会員がいるドットエスティを活用し、5年後に売り上げの6割はECで実現することを想定する。また、21日からは渋谷で6日間限定の店舗を置き、4月に大阪府門真市にオープンする大型商業施設には常設店舗を開く。常設店は初年度3店舗、5年後には15店舗に増やす計画だ。
過去には800ー1000の衣服を実店舗に並べたが、5分の1以下に絞り込む。環境への配慮なども意識し、大量生産や大量廃棄をしなくて済むよう「本当に必要な型数で、本当に必要な分しか作らない」。「欠品抑制のために常に商品を出すことは考えていない」ものの、売れ筋はすぐに追加生産する体制を整えるなど工夫も凝らす。
アダストリアはSHEINやGUと比べられることも多い。だが、R&D本部でクリエイティブディレクターを務める野田源太郎氏はフォーエバー21を「ファストファッションとは全く考えていない」と話す。ファッション性と品質で他社との差別化を狙い、長く着られる服を作りたいと語る。平均単価は4000円前後だという。
米国に売り込みも
アダストリアは国内に約50の自社ブランドを抱え、売上高ではファストリ、しまむらに次ぐ第3位の衣料品小売りだが、フォーエバー21を皮切りにライセンス事業に乗り出し、成長を加速したい考えだ。
同社はフォーエバー21のライセンス事業を他のアジア市場に広げ、さらに別の海外ブランドも手掛けようと目論む。広く認知されたブランドの方が、ゼロから育てるより事業展開にスピード感が出せるためだ。
杉田氏によると、フォーエバー21向けには新素材も開発中で、今年の夏には試験的な販売を開始する予定だ。人気漫画などとのコラボも企画する。米国のフォーエバー21への提案も積極的に行い、日本発の商品が受け入れられるような展開も視野にある。
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著者:黄恂恂
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