三菱重工「国産ジェット失敗」で抱える本当の危機 15年で1兆円の投資が水の泡、教訓生かせるか
多くの産業を巻き込んだ国家プロジェクト。失敗を繰り返すことはないのか。
日本発のジェット旅客機構想は夢と消えた。
三菱重工業は2月7日、2020年10月に「立ち止まる」としていたリージョナルジェット機「三菱スペースジェット(MSJ)」の開発を中止すると発表した。開発子会社である三菱航空機は、トヨタ自動車などほかの出資者との協議を経て清算する予定だ。
2008年に三菱航空機を設立してから15年。2013年に予定していた初号機の納入は6回も延期を繰り返し、これまでに投入した開発費は1兆円を超える。国も500億円の補助金を投入したが、量産前の最後のハードルである米連邦航空局からの型式証明(TC)を取得する直前でのリタイアとなった。
「事業性を見いだせない」
コロナ禍を理由に開発を凍結してから2年余り。三菱重工の泉澤清次社長はこの日の会見で「事業性を検討してきたが、開発を再開するに足るものを見いだせなかった」と説明した。
航空機産業は開発時にかけた膨大な投資コストを長期間の販売・運用で回収するビジネスだ。MSJはすでに最初に計画した量産開始時期から10年遅れており、その分投資を回収できる「賞味期限」が短くなってしまう。
商業運航に必要なTC取得作業を再開させても、販売開始まで「数年間、毎年1000億円規模の開発費がかかる」(泉澤社長)状況では、到底ビジネスとして成り立たない、と判断した。
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