熱血になりがち、教師の魅力を見失うほど多忙な先生に必要な「塩対応」の技術 生徒・保護者・同僚との関係、仕事見直すヒント
ケース3:保護者が「学校の対応がなっていない」と怒って電話してきた
×教師側の正当性をくどくどと説明する
→相手をさらにヒートアップさせてしまう
○相づちを繰り返しながら話を聞き、不満の根を探る。根が深いなら別の日に学年主任や管理職同席で話を聞く
ケース4:保護者が「先生にだけ、相談したいことがある」と言ってきた
×「解決してあげたい」と話を聞く
→「何でも相談してください」と受け取られ、必要以上に頼られてしまう
○保護者の話は、生徒に関係する部分のみ対応する など
一方、同僚にも時に「塩対応」をすべきだと峯岸氏は話す。
「学校はある意味、閉じられた社会です。仲間意識が強く、事を荒立てないようにする傾向があります。教師は多忙だといわれていますが、実は本当に忙しい先生と、それほどでもない先生がいる。とくに若い先生は面倒な仕事を押し付けられても、粛々として従います。最近は学校でもICT化が進み、若い先生の負担がさらに増えています。いくら事を荒立てないようにと思っても、自分の時間を潰してまで先輩の先生の言いなりになる必要はありません。若い教師が辞めていく背景には、こうした事情もあると思います」
ケース5:同僚が明らかに担当以外のことを質問してくる
×丁寧に教えてあげる、助けてあげる
→人のための仕事ばかり増える
○人に聞く前に自分で努力や工夫をしたか尋ねる
ケース6:同僚が、苦労して作った教材を「ちょうだい」と言ってくる
×本当はあげたくなくても親切にあげてしまう
→自分だけが損をしている気になってしまう
○いい人でいようとせずに、相手にgiveする範囲を決める など
塩対応とはクールに振る舞うことでも、生徒を突き放すことでもない。教師は「いい先生」になるために、生徒や保護者、同僚のお世話係になってしまっている。本来教師を目指した理由は、そこではないはずだ。
「子どもが嫌い、授業が嫌いで教師になった人はいません。教師をやっていると、よく『大変でしょう』と言われるのですが、とくに大変なのは部活の顧問と保護者の対応です。これらの負担を工夫して、もっと生徒と関わる時間をつくれれば、教師本来の仕事を楽しくできます。必要のない仕事を極力減らして、そのための時間をつくるのです。この2つの分量が変われば精神的にも楽になり、余計なエネルギーを使わなくて済むようになります」
教師が追い込まれている外的要因を取り除き、本来の仕事である生徒に向き合う時間をつくるーー。そのためのヒントが「塩対応」にありそうだ。
(文:柿崎明子、編集部 細川めぐみ、注記のない写真:buritora / PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部
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