熱血になりがち、教師の魅力を見失うほど多忙な先生に必要な「塩対応」の技術 生徒・保護者・同僚との関係、仕事見直すヒント

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
保護者の対応、同僚との付き合い、さまざまな書類の作成と、教師本来の仕事とは異なる業務が重なって、学校現場の教師が疲弊している。東京都立中高一貫教育校に勤務する峯岸久枝氏は、生徒・保護者・同僚との関係も働き方も、何でも全力で熱血に向き合うのではなく、適切な距離を取って精神的にも健全であるべきだと言う。そのヒントが「塩対応」にあると説く峯岸氏に話を聞いた。

教師本来の魅力がわからなくなるほど多忙な現場で思うこと

「教師の醍醐味は、生徒の成長を間近に見ることができること。私は教師の仕事を通して、長いドラマを見せられているような気がします。しかし、その本来の魅力がわからなくなってしまうほど現場は多忙で、生徒と関われる時間を何とかつくろうとするものの、難しい状況が続いています」

こう話すのは、東京都立中高一貫教育校に勤務する峯岸久枝氏だ。

峯岸久枝(みねぎし・ひさえ)
東京都立中高一貫教育校 教諭
1982年埼玉県生まれ。大学卒業後IT大手の富士通に就職。在職中に通信制大学で教員免許状を取得し、会社を退職して東京都の教師になる。教師を務める傍ら大学院で修士課程を修了。現在、都立中高一貫教育校に勤務しながら、大学で教職課程の非常勤講師を務めている。教科は日本史担当。著書に『先生のための塩対応の技術』(学事出版)など
(撮影:今井康一)

平日は朝早くから夜遅くまで学校にいて、目の前の業務に追われる毎日。自宅に仕事を持ち帰ることもあり、プライベートな時間を犠牲にすることも少なくない。土日も部活動や大会の引率、学校行事などがあり、たまの休みがあっても疲れ果てて何もできない……こんなネガティブなスパイラルから抜け出せずに一人悩んでいる先生は多いのではないだろうか。

なぜ教師になりたかったのか。教師になってやりたかったことは何だったのか。その原点に立ち返って日々の業務を見直し、教師本来の仕事である生徒に向き合う時間をつくるために峯岸氏が実践しているのが「塩対応」だ。

民間企業での経験から見ると学校の現状には違和感を覚えた

そんな峯岸氏は、異色のキャリアを持つ教師だ。大学卒業後、IT大手の富士通に入社し総合職の営業として活躍。在職中に通信制大学に編入してオンライン授業で学び、土日・長期休暇にはスクーリングに通って教員免許状を取得し、2008年に公立学校の教師となった。就職氷河期ほどではないものの競争率は全体で6.5倍と高かった頃のことである。

「会社の仕事には、とてもやりがいを感じていました。後輩が入り、新人の育成を担うようになったのですが、いろいろ話を聞いてみても中学・高校時代の思い出がない。楽しかったことを尋ねても『何ですかね』と、寂しい返事。彼らは中高時代、いったいどんな学校生活を送ってきたのかに興味を持ったのが、教師になろうと思ったきっかけです。当時の若者や学校のあり方に疑問を持ち、支援したいと思いました。未来の担い手を育てることで社会を変えたいと考えました」

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事