練馬区「教委・教員・保護者」の三位一体でGIGA加速 東京23区中最下位のPC整備率からの大躍進

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GIGAスクール構想の前倒しにより、2021年4月、全国の小中学校で「1人1台端末」による学びが始まった。各自治体が手探りで進める中、東京都練馬区では、昨年度中に区内の全児童・生徒に「Chromebook」のタブレット型端末を導入。教育委員会では、教員への習熟度別研修、ICT活用支援リーダーの設置、ICT支援員を倍増するなどのサポートを行う。21年1月にはGoogleの教育者グループ「GEG Nerima」、2月には保護者のコミュニティーが発足。区内の教員・保護者がつながり学び合うなどの動きが高まっている。教育委員会、教員、保護者の三位一体でICT教育と向き合う練馬区の取り組みに迫る。

1年足らずでパソコン1台当たり14人から「1人1台」へ

「19年度までは、パソコンは校内のパソコン室に置かれ、その数も各小学校に20台程度、中学校は40台程度のみ。児童・生徒が使いたい時に使える状態ではなく、学校現場にいた頃から何とかしたいと常々感じていました」と語るのは、練馬区教育委員会指導主事の原僚平氏。それもそのはず、20年春の時点で、練馬区はパソコン1台当たりの児童・生徒数が14人。東京23区中最下位だった(2019年3月/文部科学省調べ)。

練馬区教育委員会事務局 教育振興部教育指導課 指導主事
原 僚平(はら・りょうへい)
2007年教員として採用され、東京都小平市の小学校に6年間、練馬区の小学校に4年間勤務。17年度より練馬区教育委員会に勤務。ICT教育全般、情報モラル、文部科学省によるデジタル教科書の実証事業等に携わる
(撮影:尾形文繁)

そうした現状打破のきっかけとなったのは、GIGAスクール構想と、その前倒しだ。「練馬区はこれまで以上に教育分野に予算をかけ、ICT整備の加速に向け舵を切りました。コロナ禍により、全児童・生徒への端末配備が22年度から20年度までに2年前倒しとなりましたが、『20年度中に区内の全児童・生徒に端末を手に取ってもらうこと』を目標に、補正予算を計上。業者の選定や機器の配備、ガイドラインの策定など、まさに教育委員会総出で準備を進め、目標としていた20年度中に、区内約4万7000人の全児童・生徒に『Chromebook』のタブレット型端末を届けることができました」。

これらに並行し、各校が児童・生徒およびその保護者向けに動画を配信できるようにするための公式動画チャンネルの開設、各校におけるオンライン会議サービス「Zoom」利用許可、各校に2台ずつ教員の練習用に端末を先行配布し基本操作の研修、習熟度別オンライン研修などきめ細かなサポートを行ってきた。

押し付けるのではなく、教員の選択肢を広げる

今年度は、「一人でも多くの先生方のICTを活用した指導力の向上を目指し、各校の教員1名を『ICT活用推進リーダー』とし、年間5回の研修を行う予定です。研修は現場を知るリーダーのニーズに対応する形で行い、学んだことを各校に持ち帰り還元してもらうことで、裾野を広げていければと思います」と語る。

授業実践の好事例がある程度集まった段階で、それらを区内全校に発信していくというが、「目的はあくまでも、『こんな取り組みもあります』と、先生方の選択肢を広げること」。押し付けではなく、現場で役立つ情報提供を重ね、教員が主体的に“引き出し”を増やしていくきっかけをつくるのが狙いだ。

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