大阪「うめきた新ホーム」線路切り替えの一部始終 約30時間の工事を経て地下線での運転を開始

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今回の工事で「最大の難所」という福島駅付近は、今回地下化した東海道支線の線路が大阪環状線の高架沿いから東海道本線の高架橋下を抜けて大阪駅方面へと向かう区間だ。

東海道本線と大阪環状線に挟まれた工事現場
東海道本線(左)と大阪環状線に挟まれた工事現場(記者撮影)

地下化などで新しく線路を造る場合は、既存の線路の横に「仮線」を設けて一旦列車の運行を移し、空いた位置に新たな線路を建設するのが一般的だ。「スペースがあれば、新しく造る線路と営業中の線路は平面的にずらすのがセオリー」と工事担当者は話す。今回の線路切り替えでも、新大阪側はその方法を採った。

だが、福島駅付近は東海道本線の下を通るなどスペースが狭く、横に仮線を造ることができない。そこで、この区間は営業中の線路を仮設の「工事桁」で支え、その下を掘削してトンネルを建設するという工法を採用した。

「新しく造る線路の真上に仮線を通すというのが珍しく、難しいポイント」と担当者。工事桁に載った線路の上を列車が走るため、地下の工事ができる時間は列車の通らない夜間に限られたという。

直接搬出できない「工事桁」

工事桁は1つの長さが10mで、計23連・230mあった。この桁の撤去が今回の切り換え工事のキモだ。

撤去作業の条件は厳しい。上空に障害物がない場所ではクレーンでそのまま吊り上げられるが、東海道本線の高架橋下などにある6つの桁はこの方法は使えないため、一旦取り外して切断するなどしたうえで台車に載せ、クレーンで搬出可能な場所まで運んで撤去した。福島駅寄りの2つの桁も周囲が狭いため、ばらして小型クレーンで搬出した。

工事桁
クレーンで搬出される工事桁(記者撮影)

福島駅付近では、今後も地上のまま残る「浄正橋踏切」を通行止めにして線路を掘り下げる工事も行った。同踏切は、東海道支線と「なにわ筋」が交差する地点。新しいトンネルの入り口が踏切のやや先(大阪寄り)にあり、線路が地下に下っていく勾配区間にあたるため、踏切付近を最大で約70cm低くする必要があった。

地下化によって線路は急勾配となった。福島駅寄りの区間は最大22.6‰(パーミル)で、1000m進んで22.6m上るという鉄道としては比較的きつい勾配だ。新大阪寄りはさらに急勾配で、最大23.5‰。電車はそのまま通過できるが、重量のある貨物列車は機関車1両では上れないため、補助の機関車を連結して走行するという。

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