オール岐阜で真のDX化、「デジタル・シティズンシップ教育」がカギとなる訳 「こどもファーストのまち」の一大プロジェクト

(写真:栗本氏提供)
また、子どもや教員の数が少ない小規模校同士をオンラインでつなぎ、小学校での教科担任制に対応することも検討している。これが実現すれば、子どもたちにとってはオンライン上での知り合いが増えることになる。顔の見えないやり取りでは知り合いに対しても攻撃的になりやすいが、こうしたことを防ぐためにもデジタル・シティズンシップ教育が生きてくるだろう。
単独の取り組みではなく、「オール岐阜」のDX化の一環として進む岐阜市のデジタル・シティズンシップ教育。全体を俯瞰した大きなプロジェクトであるため、その利点は多岐にわたる。もう1つ、栗本氏が胸を張るのが「校務支援システムとスマート連絡帳の連携」だ。
「岐阜市では、学校と保護者をデジタルでつなぐスマート連絡帳を導入しています。導入に当たっては、出欠情報と校務支援システムをダイレクトに連携する『ワンスオンリー』と『ワンストップ』を基本方針としました。保護者がアプリで『欠席』ボタンを押せば、教員の作業を挟まずに出席簿に反映され、感染症サーベイランスへの報告も一括でできます。朝、職員室の電話が鳴らなくなったと好評です」
教室と職員室を行ったり来たりすることが激減し、教員はより授業に集中することができるというわけだ。
一方で、全体を俯瞰しているからこそ課題も見えやすいと栗本氏は続ける。
「先を見据えているので、考えなければいけないことも多くあります。例えば1人1台端末の更新について。岐阜市は2025年度に更新時期を迎えますが、端末の価格上昇も無視できない問題です。またOS変更はどうすべきか。小学生はiPadが使いやすいでしょうが、中学生にはWindowsという選択肢もないわけではありません。教員が利用する校務系端末と授業で使う学習系端末の統合を考えたときに、教員と子どもが異なるOSを使うことになると、それでは授業がしづらくならないか……」
今はまだ利活用の段階で、こうした「次のステップ」の課題を認識していない自治体も多いのではないか。栗本氏はセミナーや勉強会で情報をキャッチし、つねに先を見る姿勢でブラッシュアップを続けているそうだ。
「新しい取り組みで、しかも大きなプロジェクトなので、正直、いろいろと苦労もあります。でも市全体で取り組むからこそ、きっと大きなうねりが生まれるはず。そのうねりによって、教員や市民の方々にも、教育の変化を感じ取ってもらえるのではないかと考えています」
(文:鈴木絢子、注記のない写真:いお/PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部
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